エンゲージメント・サーベイ導入の際にチェックしたい本、中原淳先生のご著書「サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」を書評します。今回は、第4弾です。エンゲージメント・サーベイにおけるデータ集種でのこだわりのポイント、「相手本位の立場で、データの質にこだわる」にフォーカスしてお届けします。

エンゲージメント・サーベイのデータクオリティの7原則

著者の中原淳先生は、「相手本意の立場で、データの質にこだわる」ことを協調しています。

データ収集・分析というと、多変量解析や重回帰分析といった、高度な分析手法を使いたがるサーベイ担当者、サーベイ会社があります。しかし、はっきり申し上げて、高度な分析や集計資料は「自己満足」に終わることが確率的には高いと思います。なぜなら、サーベイ結果を受け取る側は、ほとんどの場合「素人」なので、いくら高度な分析によって数値やモデルが出てきても、その意味を理解できないことが多いからです。

これは、エンゲージメント・サーベイを行う目的を考えれば納得です。サーベイ自体、もしくはデータ収集に意味があるわけではなく、目的はあくまでも組織改善。そのためにも、「サーベイによって調査される側」の視点に立つべきということでしょう。

そして、これを実現するために提言されているのが下記の7つの原則です。

  1. 組織に「関係があるデータ」を含むサーベイを選ぶ (Relevant)
  2. 理解できる分析結果を返すサーベイにする (Understandable)
  3. イメージしやすい質問項目が並んだサーベイにする (Descriptive)
  4. 要点がまとまっているサーベイにする (Summarized)
  5. 信頼できるサーベイとする (Verifiable)
  6. 短くシンプルなサーベイにする (Short and Simple)
  7. 比較群のあるサーベイにする (Comparative)

エンゲージメント・サーベイはどのくらい具体性を持たせるべきか

この中から3番目の「イメージしやすい質問項目が並んだサーベイにする」を見てみましょう。ここで著者の中原淳先生は、いい例悪い例の提示として、下記をあげています。

a) ウチのマネジャーとはウマがあわない

b) うちのマネジャーは不公正な行動をする

結論としては、a)が悪い例、b)がいい例となります。その理由は、

後者は「あなたは、こういう行動をしていますよね」と具体的に指摘できるので、指摘された側もその行動を直せば良いでしょう。

とのこと。しかし、実際のところは、これでも具体性が足りないかもしれません。フィードバックを受けるマネージャーにしてみたら、「あなたの部下は、あなたが不公正な行動をしていると思っている」と言われても、「いや、どこが?」となるのが普通でしょう。とはいえ、具体性を増そうとすればするほど質問内容が個別になってしまうので、サーベイの目的としてマネージャー個人の行動を聞くのではなく、組織全体の状態を聞くと割り切っても良いと感じました。

エンゲージメント・サーベイの目的説明の5原則

本書では、さらにデータを取得する際には、その目的を伝えるべきであるという提言がなされています。具体的には、下記5原則の提唱です。

  1. なぜ、なんの目的で、サーベイを実施するのか?
  2. なぜ、今、サーベイを行うのか?
  3. サーベイには、どのような負荷が生じるのか?
  4. サーベイをやった先に、どのようなメリットがあるのか?
  5. サーベイで取得したデータは、どのように用いられるのか?

これを踏まえ著者の中原淳先生は、

人事や経営企画が主導してサーベイを行う際には、このような内容をしっかりと組織のメンバーに語っておく必要があります。

と提唱されています。

一方で、この5原則を見ると、エンゲージメント・サーベイの実施は経営者マターであるとの想いを強くしました。とくに4番目、「サーベイをやった先に、どのようなメリットがあるのか?」。これを事前に説明すると言うことは、従業員に対して組織の課題を改善すると約束することに他なりません(もしくは、改善のために努力するという約束)。これは、人事や経営企画レベルでできることではなく、経営者のコミットメントがないと、絵に描いた餅になり「エンゲージメント・サーベイ ガッカリ感の罠」に陥ってしまうと懸念します。


画像はアマゾンさんからお借りしました。

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