エンゲージメント・サーベイ導入の際にチェックしたい本、中原淳先生のご著書「サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」を書評します。今回は、第5弾です。エンゲージメント・サーベイのフィードバックミーティングにフォーカスしてお届けします。
目次
エンゲージメント・サーベイのフィードバックは誰が行う?
本書全体を貫くフレームワークは、
- サーベイによる見える化:自分の職場・チームの問題を可視化する
- ガチ対話:サーベイによって明らかになったデータに現場の人々が向き合い対話を行う
- 未来づくり:自分たちの将来のあり方を自分たちで決めてアクションプランを得る
というものでした。今回はこの2番目のプロセス、「ガチ対話」、すなわちエンゲージメント・サーベイのデータに基づく対話のための方法論です。大前提として、著者の中原淳先生は、フィードバックの主体、すなわちフィードバック・ミーティングのファシリテーターは現場のマネージャーが行うべきであると提言されています。
しかし、これは現実的には難しいのではないでしょうか。後述しますが、6ステップからなるフィードバック・ミーティングを主催するのは、かなり難易度が高いものです。たとえば、「各人が本音の対話ができるように守るべきルールを設定する」というものが必要になりますが、これはふだんの職場における上司と部下の関係性に大きく依存します。ふだんの職場で本音が言えないにもかかわらず、いきなりフィードバック・ミーティングで「ホンネで話そうよ」とニタニタしても、部下は怪しむばかりでしょう。
しかも、現場のマネージャーの立場で考えてみましょう。ある日突然、経営陣の意向でエンゲージメント・サーベイをやることになるわけです。しかも、サーベイ実施の前に、その目的を部下に伝える必要があります。これだけでももう、「めんどくせーなー」となります。その上、エンゲージメント・サーベイが終わったら、「結果を部下にフィードバックして下さい」と指示が来るわけです。まともな人間ならば、「おいおい、人事が勝手に始めておいて、尻拭いはオレたちかよ」と感じるのが普通です。
したがって、実際のところは、エンゲージメント・サーベイのフィードバックは主管部署である人事や経営企画主導、あるいはその意を受けた外部の専門家によって行われる方が、現実的であると感じました。
エンゲージメント・サーベイのフィードバック・ミーティングの6ステップ
では、各論として、著者の中原淳先生が提唱するフィードバック・ミーティングの6ステップを紹介します。
- 目的説明:職場やチームの関係者を一堂に集めることをめざす。そのうえで、この回の目的、アジェンダなどを話し合う
- グラウンドルールの提示:各人が本音の対話ができるように守るべきルールを設定する
- データの提示:なるべくシンプルに、データを提示する。見るべき部分を焦点化するなどのことは行っても良い
- データに対する解釈:データに対して、各人が日頃から思っていること感じていることをいってもらう
- 「未来」に向けた話し合い:今、自分たちはどのような状況にあり、これから、未来、どのようにありたいのかを話し合う
- アクションプランづくり:明日からできることを考える。具体的なアクションプランに落とし込んでいく
エンゲージメント・サーベイのフィードバックミーティングにおけるグラウンドルール
上述の6ステップの中から2番目、「グラウンドルールの提示」を解説します。まずはそもそもですが、グラウンドルールの解説から。もともとは野球用語で、昔のアメリカでは、野球場によって形が異なっていたそうです。そこで、球場(グラウンド)ごとに、「ここを超えたらファールね」、「ここからうえにボールが当たったら2塁打ね」のようにローカルルールを決めていたとのこと。これがグラウンドルールです。今では転じて、会議の際に参加者の行動を規定するルールとしてビジネスでは使われています。
著者の中原淳先生は、例として書き8つのグラウンドルールを本書では提示されています。
- 積極的に聞く
- いったん受容する
- 批判厳禁
- 分からないことは質問する
- 肩書き厳禁
- 時間厳守
- 悪者探しをしない
- 発言はここにおいておく
前ページ 中原淳 著、サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】その4を読む |
次ページ 中原淳 著、サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】その6を読む |
|
---|---|---|
エンゲージメント研修のページに戻る |