プロジェクトで仕事をする機会が増えてきています。VUCAとも呼ばれる激しい環境変化の中、固定的な従来組織ではなく、フットワーク軽く仕事をすることが求められているのでしょう。ただ、プロジェクト特有の難しさもあり、これを乗り越えるためのプロジェクトマネジメントが学べるのが、飯田剛弘先生の著書、「童話でわかるプロジェクトマネジメント」 です。

本当に童話で分かるプロジェクトマネジメント

内容としては書名通りで、童話を題材にしながらプロジェクト・マネジメントが学べるというものです。

  • 3匹の子ブタを題材として、プロジェクトを成功に導く「段取り」
  • ウサギとカメを題材として「ゴール設定術」
  • 桃太郎を題材としてチームで目的を達成する「仲間術」
  • ヘンゼルとグレーテルを題材として「リスク管理術」
  • ありとキリギリスを題材として「情報共有術」

が、それぞれ学べるという構成です。

たとえば3匹の子ブタのところでは、お義母さんブタに命じられて、子ブタたちがそれぞれ家づくりのプロジェクトに取りかかるという設定です。長男ブタは何も考えずに手近にあった藁で家を作ってしまう、次男ブタは「藁の家だとなんか不安だな」と、少し考えただけで木の家を建ててしまう、と紹介しています。これをベースに、著者は、

計画を立てないのは、失敗する計画を立てているのと同じだ

と言う言葉とともに、計画の重要性を解説するのです。

もちろん、プロジェクト・マネジメントにおいては計画が重要というのは当たり前なのですが、このような具体的な話があると、それだけで「やっぱりそうだよなぁ」と納得感が高まります。

ちなみに、長男、次男の失敗を見た三男ブタは、自分の家を建てる際に、驚くべき行動に出ます。それが、

お母さんに相談する

というもの。実はプロジェクトマネジメントにおいては、ステークホルダー、つまり利害関係者の期待を確認することが大事なのです。たしかに、この段取り抜きにはプロジェクトの目的を定めることができないのは当然ですね。

著者は国際プロジェクトマネジメントの専門家

このように具体的かつ説得力を持ってプロジェクトマネジメントの解説ができる秘密は、著者の飯田剛弘先生のご経験にあると拝察しました。南オレゴン州立大学をご卒業後、インサイトテクノロジー社でインド企業とのソフトウェア共同開発プロジェクトに携わられたとのこと。インドの方って、とにかく自分の意見を主張する人が多い印象で、これを聞くだけでもご苦労が忍ばれます。

本書執筆時点では、ファロージャパン株式会社にて、日本、韓国、東南アジア、オセアニアの4地域のチームをまとめるマーケティング責任者を務められているそうで、まさに国際プロジェクトの専門家です。日本人同士ですら意思の疎通が難しいときがあるわけで、国際的な環境でのプロジェクトマネジメントはいっそう難易度が高いことでしょう。そこで学んだノウハウを共有してくれているのが本書なのだと思います。とはいえ、本書はどちらかというと初心者向けなので、さらに専門的な内容を知りたい方は飯田剛弘先生が運営されているマーケティングポータルサイト「ビジネスファイターズ」をチェックすることをお勧めします。

具体的かつ実戦可能なプロジェクトマネジメントのノウハウが知りたい

一方で、本書を読みながら、「そこの具体的なテクニックを知りたい」という気持ちを抑えきれませんでした。たとえば、「仲間術」のところでは、

プロジェクトの立ち上げ段階では特に、ステークホルダーマネジメントの一環として、プロジェクトメンバーが何を期待するのかを傾聴することが大切です。例えば、「どういったものを求めているのか」、「どうしてそう感じるか」など、内面を意識した傾聴を心がけ、メンバーそれぞれの価値観を見つけに行きます

とあります(152p)。これはこれで大賛成なのですが、多くの人はその「内面を意識した傾聴」ができないことに悩んでいるわけで、具体的勝つ実戦可能なノウハウがあるとより本書の価値が高まると思いました。たとえば、このパートは桃太郎を題材にしているので、「相手の名前を呼んであげる」なんてノウハウを紹介してもよかったのでは?桃太郎も家来の動物たちを、いつまでも犬、猿、雉子ではなく、ちゃんと名前をつけて呼んであげれば、さらにチームの結束力は高まったかもしれません。

PMBOK対応のプロジェクト・マネジメント

本書のもう一つの特徴は、PMBOK(ピンボック)、すなわちProject Management Body of Knowledge 「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」にも対応していることです。具体的には1章をさいて、「PMBOKへの橋渡し」が解説されています。

PMBOKは様々な種類・規模のプロジェクトに適用できるように抽象化されているため、一見難しく感じられる

と著者も本書の「はじめに」で述べていますので、仕事上PMBOKを学ぶ必要があるが、理解するのに苦労している方には特にお勧めです。実は著者の田剛弘先生は、プロジェクトマネジメント協会(PMI)の標準本「PMI標準 プロジェクト・マネジャー・コンピテンシー開発体系 第2版」の翻訳にも携わられて、この分野の第一人者でもあります。


画像はアマゾンさんからお借りしました