マーケティングにおいてデータが重要なのは、もはや言うまでもないでしょう。何かのプロモーションを実施するにしても、本当に透過したお金に見合う売上が上がるのかをチェックするのはもはや当たり前です。これをかっこよく言うと、「データ・ドリブン・マーケティング」。英語ではData Driven Marketing。直訳するならば「データによって駆動されるマーケティング」となります。
これを体系的にまとめてた本が、マーク・ジェフリー教授の「データ・ドリブン・マーケティング―――最低限知っておくべき15の指標」。
「データ・ドリブン・マーケティング」の著者はマーケティングの名門、ケロッグ経営大学院の教授
著者のジェフリー教授は、米国のマーケティング教育の名門、ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院の非常勤教授だそうです。同校のマーケティング部門を率いるフィリップ・コトラー先生は、長らくこの分野の第一人者と目されているので、名前を聞いたことがある人も多いでしょう。
著者のジェフリー教授に話を戻すと、同氏はケロッグ経営大学院のテクノロジー&イノベーション研究センターのテクノロジー・イニシアティブ・ディレクターを務めている方だとのこと。この分野を解説するにはうってつけの方でしょう。
ちなみに、原書の「Data-Driven Marketing」が出版されたのは2010年。書評を書いている今(2018年)からみると、ちょっと時代遅れの感は否めません。最近はマーケティング・オートメーションの名の下に、この分野は相当進歩していますからね。ある意味この事実こそが、マーケティング・テクノロジーの進化を表しているのだとおもいます。あるいは、2010年に米国で出版された本が2017年4月に翻訳されるというのは、日米の差を表しているのかもしれません。
意外とリスクがある15の重要なマーケティング指標
では、内容ですが、まず注目したのが「15の重要なマーケティング指標」というパート(10p)。
- ブランド認知率
- 試乗(お試し)
- 解約(離反)率
- 顧客満足度 (CSAT: Customer Satisfaction)
- オファー応諾率
- 利益
- 正味現在価値 (NPV: Net Present Value)
- 内部収益率 (IRR: Internal Rate of Return)
- 投資回収期間
- 顧客生涯価値 (CLTV: Customer Lifetime Value)
- クリック単価 (CPC: Cost per Click)
- トランザクションコンバージョン率 (TCR: Transaction Conversion Rate)
- 広告費用対効果 (ROAS: Return on Ad Dollars Spent)
- 直帰率
- 口コミ増幅係数 (WOM: Word of Mouth、ソーシャルメディア・リーチ)
実はここに本書の特徴があり、読者として大企業に勤めている人を想定していることが分かります。しかも、マーケティングの実務に携わると言うよりも、マーケティング部門の責任者として、自分たちの行っていることの正当性をトップマネジメントに報告する立場の人でしょう。
逆に言うと、実務家にはNPVやIRRなどの投資指標はそれほど重要ではないと考えます。そこまでいちいち考えていたら小回りの利くマーケティング施策は打てないわけで、本書で記載されていることを盲信するのはかえってリスクです。
データ・ドリブン・マーケティングの目次
- 第1部:データドリブンマーケティングのアウトライン
- マーケティング格差
- 何から始めるべきか
- 10の伝統的なマーケティング指標
- 第2部:マーケティングの成果を劇的に向上させる15の指標
- 1つの重要な財務系指標
- 投資リターンを示せ
- すべての顧客は等しく重要ではない
- クリックからバリューへ
- 第3部:データドリブンマーケティング上級編
- アジャイルマーケティング
- まさにこれが必要だったんだ
- データドリブンマーケティングに必要なITインフラ
- マーケティングの予算、テクノロジー、プロセス