エンゲージメント・サーベイ導入の際にチェックしたい本、中原淳先生のご著書「サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」を書評します。今回は、第8弾。事例を紹介します。
3ヶ月に1回エンゲージメント・サーベイを行うメルカリ
エンゲージメント・サーベイを使った組織開発を行っているのがメルカリ。フリマアプリの雄として、もはや会社の解説は不要でしょう。メルカリのようなハイテク企業は事業展開のスピードが速いため、組織の状況の把握もハイペースで行う必要があり、比較的短いスパンでエンゲージメント・サーベイを行っているとのことです。
著者の中原淳先生いわく、
大半の企業では年1-2回ですから、かなり頻繁ですね
とのこと。サーベイも2種類実施しているそうで、
- 組織全体のコンディションを見える化する「組織サーベイ」
- 管理職のマネジメントを見える化する「マネジメント・サーベイ」
です。
エンゲージメント・サーベイの結果を関係者に知らしめるフィードバックもハイペースで、サーベイ終了後2-3日後には、経営陣が集まる経営会議で結果を発表するとのことです。
仮説を検証するためのメルカリでのエンゲージメント・サーベイ
メルカリでエンゲージメント・サーベイを使った組織開発をリードしているのは「オーガニゼーション&タレントデベロップメント・マネジャー」という役職の方ですが、コメントとして面白いのは、最初に仮説を立て、それを検証するためにエンゲージメント・サーベイを使っているところです。引用してみましょう。
(エンゲージメント・サーベイで出てきた課題は) ほとんどが事前に立てていた仮説とズレることなく、メンバーも大なり小なり分かっていたことでした。うっすら分かっていた課題を、サーベイを通じて、改めて再確認したというイメージです。
エンゲージメント・サーベイはともすると、サーベイで課題のあぶり出し→それに対する打ち手の立案→経営陣の承認を得る、と言う流れを想像しがちです。しかし、これではスピード感が出ないのでしょう。むしろ、最初に課題解決の打ち手まで含めた仮説を立てておき、これを検証するためにサーベイを利用するというのがメルカリのすぐれたところだと感じました。まさに、エンゲージメント・サーベイの逆算モデルを実行している印象です。
メルカリはエンゲージメント・サーベイで継続的な組織開発をする
前述の通りスピード感を持ってエンゲージメント・サーベイを活用しているのがメルカリの特徴ですが、同時に長期的な視点も感じました。具体的には、設問にこだわっているところです。
「サーベイに答えるのが面倒」と思われないように、気を配っています。当社は3ヶ月に1回とるので、あまり長時間かかるようなサーベイをすると、真面目に答えてもらえなくなったり、不満のもとになったりします。(中略)5-10分で答えられるぐらいの質問量にしています。
このような気遣いがあってこそ、エンゲージメント・サーベイが根付くのでしょう。そして、これほどまでにこだわっている理由として、組織のあらゆるところからホンネを拾いたいという意志も感じました。
サーベイをしていない組織は、立場が強い人が声高に主張したことが通ってしまいがちですが、サーベイを取り入れれば、立場が小さい人の声を拾い上げることができます。(中略)未来永劫、サステナブルに続く企業をつくるためには、サーベイ・フィードバックは欠かせない手段ではないかと思います。
と言う言葉が印象的です。