リアルな体験が盛り込まれている、海外勤務を論じた良著です。
白藤 香著、海外勤務を命じられたら読む本 グローバルマネジメント入門
目次
意外と関係ない「異文化」
少し意外なのですが、「実際の現場では異文化そのものによる弊害はない」と著者の白藤香先生は解説しています。なぜならば、
お互い外国人同士であるため、相手の文化を100%理解してもらうことなど、最初から期待していないからだ。だから文化的に行動様式や考え方が同じでなくても問題はないのである。
とのこと。これはたとえば、グローバル企業で働くような状況だと容易に想像がつきます。上述の通り「お互い外国人」ですし、「外国人慣れ」とでも言うか、相手も異文化を尊重してくれる人ならば、問題は少なそうです。
一方で、相手の懐に飛び込まなければならないとき、たとえば小さい現地営業所を立ち上げるときなどは、やはり相手の文化を知っておくに越したことはないでしょう。そのために、「ホフステッドの4次元(もしくは6次元)」などで相手国の文化を知っておくのがお勧めです。
本書の著者の白藤香先生が勧めているのは、異文化の理解よりも思考をグローバル化することです。具体的には、
- 帰納法:事実を踏まえてこうであると実証する
- 演繹法:仮説を立て、意図する理論軸で複数裏付けられた事実を踏まえてこうであると実証する
- 弁証法:時系列に水位を踏まえて不変の事実からこうであると実証する
という三つの思考法が重要であるとのこと。
日本のビジネスパーソンに足りない専門知識
加えて本書の特徴は、専門知識の重要性を前面に押し出していることです。
「観察からの洞察力」が求められるマーケティングの知識
- 法律の知識
- 心理学の知識は組織マネジメントに役立つ
- 経済学、数学、統計学が三種の神器
などなど。
日本においては職種をまたいだ人事異動(ジョブ・ローテーション)が一般的であるため、よく言えばジェネラリスト、悪く言えばその会社でしか通用しない人材が生まれがちです。それでは海外の専門分野を持った人材と対等にビジネスをするのが難しいと言うことでしょう。
なお、著者の白藤香先生はMBA(経営学修士)を評価していますが、ここに関しては若干注意が必要です。とくに最近の日本のようにMBAホルダーが大量にいる状況にあっては、MBAというタイトルそのものはそれほど大きな意味を持ちません。また、MBAを教える側が極度にアカデミックだと、「頭でっかちで実務に使えないMBAホルダー」も多いものです。もちろん著者の白藤香先生はそう言っているわけではないですが、「MBAをとれば海外でも何とかなる」と誤解しないようにしたいものです。
それでも実感する海外と日本の違い
人と組織にはある共通の傾向があることを発見した
アメリカ・中国の大陸人は、共通した価値観を持っている。日本人は、どちらかというと欧州人の価値観を共有している確率が高い
海外では「職務明細」を元に仕事をする
海外では「出来高制(pay for performance)」で終業するのが一般的である。職務明細を「時間内に完璧に推敲できて当たり前」とする職業観がある
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