「チームワークをよくするためにも部下のモチベーションを上げたい…」。そんな風に思うときに手にとっていただきたいのがテレサ・M・アマビール教授と、スティーブン・J・クレイマー氏の論文、「インナーワークライフの質を高める『進捗の法則』」です。
モチベーションのキモに関する誤解
いきなりですが質問です。社員のモチベーションをあげる手法の中で、現場のマネージャーにもっとも指示されたものはどれでしょうか?
- 仕事の進捗に対する支援
- 優れた仕事に対する評価
- インセンティブ
- 対人関係の支援
- 明確な目標
答えは意外なことに…
1番目の「仕事の進捗に対する支援」なのです。
ところが、多くのマネージャーは、2番目の「優れた仕事に対する評価」がモチベーションアップのキモであると誤解しています。ここにチームマネジメントの難しさがあります。
触媒と栄養素こそがチームビルディングの源泉
著者が「進捗の法則(progress principle)」と名付けた動機づけの仕組みを解説しましょう。
科学上の大きな謎を解こうとしているにせよ、ひたすら質の高い製品やサービスを生み出そうとしているにせよ、日々の進捗(小さな成功でもかまわない)は人々の感じ方や行動を大きく変えることができる。
とのこと。ただし、前提条件があり、
モチベーションのカギは「有意義な仕事」の進捗を支援することである。(中略)それはその仕事が自分にとって重要な場合に限られる
となります。これは、直感にも一致します。
では、どうやって進捗を感じてもらうかのキーになるのが、「触媒」と「栄養分」と言う概念です。触媒は「仕事を後押しする行動」、栄養分は敬意と評価、激励、快適感、協力の機会を指します。
一方で、著者のアマビール教授は、進捗を感じるのにネガティブに働く要素を「阻害剤」、「毒素」と呼び、これを避けることを提唱しています。
チームビルディングが好業績をもたらすメカニズム
下記、触媒と栄養分、阻害剤と毒素のリストです。これを見ると、いずれも自分の外部のメンバーからの影響であるのがお分かりいただけるかと思います。要するに、人と人とのチームワークを促進するのがこれらの要素であると理解しても間違いないでしょう。これこそが、チームビルディングが好業績をもたらす理由と言えるかと思います。
リストの使い方としては、著者は、
毎日の終わりに、このチェックリストを使ってその日を振り返り、翌日のマネジメント行動を計画して欲しい
と提案しています。
- 進捗
- 触媒
- チームは有意義の仕事について短期的長期的な目標を持っているか
- チームメンバーは問題を解決してプロジェクトに当事者意識を感じるだけの自主性を与えられていたか
- チームメンバーは効率的に前進するための必要な資源を全て備えていたか
- チームメンバーには有意義な仕事に集中する時間があったか
- チームメンバーが支援を必要としたあるいは要求した時それを提供したかメンバーがお互いに助け合うように促したか
- 今日の成功または失敗からの教訓をチームメンバーと話し合ったか
- グループ内の自由なアイデア交換を支援したか
- 栄養分
- 進捗に対する貢献を評価しアイデアに関心を払い信頼できるプロフェッショナルとして扱うことでチームメンバーには敬意を表したか
- 困難な課題に立ち向かったチームメンバーを激励したか
- 個人または仕事上の問題を抱えたチームメンバーの支援したか
- チーム内には個人又は仕事上の協力関係や一体感があるか
- 触媒
- 挫折
- 阻害剤
- 今日どのような出来事が小さな挫折または危機の可能性を表してるか
- 有意義な仕事の短期的長期的目標が不明瞭だったか
- チームメンバーは問題を解決しプロジェクトに当事者意識を感じる上で制約を受けすぎていたか
- チームメンバーには効率的に前進するのに必要な資源が足りなかったか
- チームメンバーには有意義な仕事に集中する時間が足りなかったか
- 必要とされたあるいは要求された支援を誰かが提供しなかったか
- 失敗を罰したかあるいは成功や失敗に潜む教訓あるいはチャンスを探そうとしなかったか
- アイデアの発表は議論を誰かが時期尚早に遮ったか
- 毒素
- 進捗に対する貢献を評価せずアイディアに関心を払わず信頼できるプロフェッショナルとして扱わないことでチームメンバーを軽視したか
- チームメンバーをどのような形であれ落胆させたか
- 個人または仕事上の問題を抱えたチームメンバーを無視したか
- チームメンバー間またはメンバーと自分の間に対立や緊張があるか
- 阻害剤
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