チームビルディングの手法の一つ、組織開発の入門書をレビューします。読んだのは、中村和彦先生のご著書、「入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる」です。

組織変革の手法、組織開発

著者の中村和彦先生いわく、組織開発とは

組織の健全さ(health)、効果性(effectiveness)、自己革新力(self-renewing capabilities)を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程である

というもの(ウォリックの定義)。

その根底には4つの価値観があります。

  • 人間尊重の価値観
  • 民主的な価値観
  • クライアント(当事者)中心の価値観
  • 社会的・エコロジカル的システム志向性

大きく二つに分かれる組織開発

著者の中村和彦先生は、米国の研究者ブッシュ&マーシャクの研究結果も引きながら、一口に組織開発と言っても大きく二つに分かれると解説しています。それが、

  1. 診断型組織開発
  2. 対話型組織開発

です。前者の診断型はその名の通り、サーベイやインタビューによって組織の現状を「診断」し、その客観的な情報に基づいて組織開発の具体的な方法を検討するものです。一方、後者はこの診断のフェーズを経ず、当事者同士の話し合いに基づいて、ある意味主観的に組織の状況を診断しながら変えていこうというものです。

この二つのアプローチは、思想的背景も異なると著者の中村和彦先生は説きます。

診断型組織開発が客観的実証主義に基づいているのに対して、対話型組織開発は解釈主義や社会構成主義に基づいていると考えています。

とのこと。

リーダー養成型組織開発

上述の組織開発の二つのアプローチとは別に、誰が組織開発の担い手なのかによっても二つの分類があると著者の中村和彦先生は説きます。それが、

  1. リーダー養成型組織開発
  2. パートナー型組織開発

です。前者は米国のGEなどでも行われていますが、リーダー育成と社内の人事制度をリンクさせることにより、全社的に組織をよくしていこうという取り組みです。リーダー育成においてはリーダーシップ研修は当然のこととして、評価や異動(ジョブローテーション)まで含めてリーダーを発掘・育成していこうという取り組みです。

もちろん、GEほど包括的な取り組みでなかったとしても、リーダーシップ研修、管理職研修、ファシリテーション研修などによって個々のリーダーの組織を変える力を高めるというのも個々に含まれるでしょう。

パートナー型組織開発

一方の、パートナー型組織開発は、外部のコンサルタントなどをパートナーとして、組織開発に取り組んでいくものです。実は、このパートナー型組織開発も、さらに細かく3つに分かれると米国の研究者エドガー・シャインに依って提唱されています。それが、

  1. 専門家モデル(情報-購入型)
  2. 医師-患者モデル
  3. プロセス・コンサルテーション

です。1番目の専門家モデルは、専門家のみが知っている情報や上手なやり方をクライアントに提供するというもので、いわゆる「コンサルティング」という言葉で私たちが思い描くのに一番近いでしょう。提唱者のエドガー・シャインは、クライアントが自身の問題に気づいているときは、この専門家モデルが適していると提唱しています。

一方、多くの場合、クライアント自身も問題に気づいていないものです。組織開発で言えば、「なんとなく、うまくいっていないのは分かる。でも、どうしたら…」という状況でしょう。この場合は二番目の医師-患者モデルの出番です。まるでお医者さんが患者を診察するように、外部のコンサルタントがデータを集めたり分析することになります。

とはいえ、仮にお医者さんの診断がでて処方箋が渡されたとしても、患者がその薬を飲むとは限りません。ましてや、その薬がにがい場合はなおさらでしょう。そんなときは三番目のプロセス・コンサルテーションの出番です。これは言わばクライアントと「併走」するようなもので、

クライアントが自らのプロセスに気づき、変革していくための行動を自ら決めていく家庭を支援していくという、支援関係を築くことである(中略)職場や組織の当事者が主体的に変革に取り組むことが重要である

となります。

画像はアマゾンさんからお借りしました

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