こんにちは。シンメトリー・ジャパン代表の木田知廣です。「なんだか組織がガタついている…」。人事の方からご相談をいただく機会が多くなりました。よくよく話を聞いてみると、どうやら社内政治が組織を根っこから腐らせているようです。たとえば、昇進、異動、予算配分など、合理的な判断よりもパワーバランスで決まるとか。組織の「根っこ」であるがゆえに目に見えにくいのですが、イノベーション停滞や優秀な人材の流出、そして社員の満足度低下など、さまざまな症状の根本の原因がここにあるケースが多いものです。
では、どうしたらよいか?この「禁断の領域」に正面から向き合い、組織の力を最大限に引き出すための実践的なスキルを私たちは提供しています。社内政治で悩んでいる管理職の方はもちろん、社内を政治化させたくない経営者の方は、下記よりお問い合わせください。
シンメトリー・ジャパン代表
講師
木田 知廣 (KIDA, Tomohiro)
シンメトリー・ジャパン株式会社 代表
大学卒業後、米国の名門コンピュータ会社DECで働き始めるも、IT業界の再編の波を受けて同社は消滅。退職を余儀なくされる。この経験をきっかけに、会社が倒産しないための「まっとうな組織」とは何かの模索を始め、その答が「人材マネジメント」であった。
この分野で研鑽を積むべく、人事コンサルティング会社タワーズワトソンの門を叩く。その後、MBA取得を目指して渡欧。2001年にはロンドン・ビジネススクールでMBAを取得した後、グロービスにて講師としてデビューする。
2006年、シンメトリー・ジャパンを立ち上げて代表に就任し。本物のチームビルディングの理解を普及することに力を入れている。2012年からは米国マサチューセッツ大学でも教鞭をとる。
ライフモットーは、”Stay Hungry, Stay Foolish” (同名のブログを執筆中)
社内政治勉強会の内容
こんな組織は危ない:社内政治の症状
社内政治は目で見えないものなので、自社がどのくらい汚染されているかは分かりにくいもの。ここで挙げる社内政治度合いが強い組織の特徴に照らし合わせて、御社の現状をぜひチェック下さい。
政治力の五大源泉
社内政治度合いが強い組織の中に必ずいるのが「社内政治の上手な人」。社内の有力者を見つけてすり寄っていくのが上手、実力がない割に仕事の成果をアピールするのが得意…、そんな人物に心当たりがある人も多いでしょう。ここでは、そのような社内政治上手な人が使いこなす「五大源泉」を明らかにします。
社内政治は早めに「芽を摘む」べし
社内政治を抑えるには、社内政治上手な人の行動に制限を加えることが肝です。それも、できるだけ早く。なぜならば、社内政治は伝染するから。誰かがそういう行動を始めると、他の社員も「ああやって上に取り入ればいいんだ」とマネを始めます。そうならないように早めに悪い芽を摘む方法論を紹介します。
人事部必見:社内政治の対処法
人事が避けて通れない社内政治という現実<リアリティ>
人事部門にいると、社内政治がどれほど重要かと痛感することが多いのではないでしょうか?昇進・昇格からから始まって、異動やお金の配分など、全社最適の視点から合理的な判断をしたというよりも、関係者のパワーバランスでモノゴトが決まっていく例は、業界や会社の規模を問わず枚挙にいとまがありません。そしてこれは現場でも同じで、どの企画が承認されて予算が付くかは、企画のクオリティよりも「誰が出した企画か」がしばしば重視されることはご存じでしょう。
ただ、このような社内政治は日本の企業社会においては「禁断の領域」とされ、表だって話題になることはあまりありません。多くのビジネスパーソンは、社内政治を無視するにしても意識するにしても、極めてナイーブ<素朴>な見方をしているのではないでしょうか。たとえばそれは、社内政治なんかございません、とばかりに上っ面だけを見て「大切にしたい組織」と賞賛したり、あるいは政治力を持つ人に「○○界のドン」などの尊称を奉ったりする行動に表れます。
本稿では、このタブーをうち破り、社内政治という現実<リアリティ>の中で人事パーソンが成果を出すための方法論を提言することを目的としています。そのためにも政治力はどのように形づくられるのかを分析し、これを後天的に身につけることができるスキルとして体系化を試みます。と言って、パワーバランスをどう読んでどう利用するか、のような社内政治のテクニックをお届けすることが目的では、もちろんありません。本稿を通じて実現したいのは、政治力の形成を理解することによって社内が政治化することを防ぐための実践的なノウハウを人事に携わる方にお届けすることです。
社内政治という死に至る伝染病
言うまでもありませんが、社内政治はない方が良いに決まっています。政治度合が強い組織は、冒頭に見たようにリソース配分を合理的にできませんし、他にも、「とんがった」人材が社外に流出してしまう、革新的なアイデアが出ない、社員満足度も低下するなど、競争力の減退を招きます。これは一企業の問題のみならず、ひょっとしたら日本経済を覆う疲弊感の原因になっているのではないかと筆者は懸念します。官僚機構をはじめとした日本の大組織において、社内政治が強すぎることがイノベーションを阻む元凶ではないか、と。
しかも、恐ろしいことに社内政治には極めて強い「伝染力」があります。「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉にたとえて「社内政治は起業家精神を駆逐する」と言っていますが、政治的な動きで「楽してオイシイ」思いをする人間が出てくると、そのやり方を真似する人間が必ず出てくるものです。そしてそれを見た人間がまた真似をすると…起業家的な精神を持った社員が駆逐されて、いつのまにか幅を利かせるのは批評家社員ばかり。
実際、筆者も目撃したことがありますが、ベンチャー的な風土を誇った会社でも1年もあれば社内政治が蔓延し、大企業病に陥ってしまいます。もともとはベンチャー企業ですから、結果を恐れずに新しいものに取り組んでいくマインドがあふれた組織でした。ただ、イノベーションへの取り組みは必然的に失敗を内包していますから、中にはうまくいかなかったプロジェクトも出てきます。そこに一人の「批評家社員」が登場し、社内政治力を発揮しながら「なぜこんな失敗をしたんだ」、「誰がこれを決めたんだ」と犯人探しを始めると、そのような行動は極めて高い伝染力を発揮します。面白いもので、と言うと不謹慎かもしれませんが、社員は「この組織では誰が力を握っているのか?」に対して驚くほど敏感なもの。先ほどのような批評家社員を目にすると、「この組織では、新しいことに取り組んむと損なんだな。むしろ、従来のやり方に従って失敗を避けた方が良いし、できれば人の仕事のあら探しをした方が評価される」と考え始め、あっという間に大企業病ができあがりです。
では、このような社内の政治化を打破するためにはどうするか、という答が人事部門にあると筆者は考えます。なぜならば、「社内政治力の五大源泉」である
- 社内の情報通になる
- 公式な権威を借りる
- リソース配分の権利を握る
- 同意見のグループを形成する
- 専門スキルを高める
をもっともチェックしやすい機能を人事が持つと考えるからです。すなわち、社内政治に対する人事の役割は、五大源泉を駆使して社内政治で優位に立とうとする社員を捕捉し、彼らの行動に掣肘を加えることにあると考えます。
欧米では研究が進む社内政治
ちなみにこの政治力の五大源泉は筆者が提唱しているものですが、米国の先行研究にも多くを負っています。面白いことに日本ではしばしば禁断の領域とされる社内政治も、米国においては、社会学、心理学、そしてもちろんビジネススクールにおいて研究が進んでいます。たとえば、主に個人対個人で政治力を発揮する方法論をまとめた「影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか」 (ロバート・B・チャルディーニ著、誠信書房刊、2007年)を読んだことがある読者も多いでしょう。あるいは世界的なベストセラーである”Managing With Power: Politics and Influence in Organizations” (Jeffrey Pfeffer著、Harvard Business School Press刊行、1994年)は、この分野に興味がある人ならば一度は目を通すべき文献です。
そして、忘れてはならないのが筆者のビジネススクール時代の恩師、故スマントラ・ゴシャール教授。日本では主に戦略の大家として知られる同教授も、実は組織内において社内政治を打破して起業家精神を発揮せしめるところに興味の重点がありました。たとえば著書の「個を活かす企業―自己変革を続ける組織の条件」で示した、米GEのような巨大組織における大企業病の克服は、社内が政治化することを避けるための示唆に富んでいます。留学当時、スマントラと接する中で得た知見も研修では紹介します。