「EQをチームビルディングに使えないか…」。そう思ったときに手にとってしまうかもしれないのがバネッサ・アーク・ドリュスカット准教授とスティーブン・B・ウルフ氏による論文、「チームEIの強化法」です。

EQでチームビルディング

本論文ではEI(エモーショナル・インテリジェンス)という言葉を使っていますが、EQと読みかえて、書評を進めていきます。

まずは定義ですが、

チームEQとは、不愉快な感情が芽生えた場合、いかに対処し、速やかにこれを抑制できるかといった組織能力ではない。まったく逆である。チームEQとは、意図的に感情を表出させることであり、それがグループでの作業にどのように影響を及ぼすのかを理解できることである。言い換えれば、当該グループ内およびその外で人間関係を築いたり、課題や難題にグループとして対処したりする能力を高めるには、どのように行動すべきかという問題である。EQとは、仕事や業務における人間の感情を掘り下げ、受け入れ、究極的には頼ることである。詰まるところ、仕事とはきわめて人間的な行為だからだ。

そのうえで著者のドリュスカット准教授は、「チームダイナミズムのモデル」で、チームのEQが高まると下記のようにチームの業績が上がるとしています。

チームEQ

 ↓

信頼 (メンバー間の信頼)
帰属意識 (働きがいのあるグループに属しているとメンバー自身が感じること)
有効性 (グループがうまく機能しており、単独よりもコラボレーションした方が力を発揮できるとメンバーが感じること)

 ↓

参加意識
協力やコラボレーション

 ↓

より優れた判断
より創造性の高い問題解決策
より高い生産性

チームビルディングでは「規範」がカギ

では、どのようにチームのEQを高めるか?と言うときにカギになるのが「規範」だとのこと。次の章で説明しますが、著者のドリュスカット准教授は、メンバーにとっての規範、グループにとっての規範、外部の個人やグループに対しての規範と、三つのレベルで規範を例示しています。

このポイント、「規範」と聞くと何やら固く聞こえてしまいますので、むしろ「行動指針」、あるいは「グラウンドルール」と読み替えた方がピンとくるかもしれません。

いずれにせよ、

グループ内に何らかの雰囲気、すなわち、チームEQを高めるような行動規範に則りながら、感情キャパシティ(感情的に不快な状況にも前向きに対応する能力)を育み、建設的な方法でメンバーの感情に影響を与える雰囲気を醸成することが求められる

というのが著者のドリュスカット准教授の提言です。

チームビルディングのための行動規範

個人レベルでのチームビルディングのための行動規範

感情を意識させる規範
相互理解
  • 作業時間とは別の時間を設けて相互に理解しあう
  • 会議の冒頭で、「全員元気かい?今日はどんな調子か」などと尋ねる
  • 好ましくない行為の背景には何か原因があるのだ。その理由が何かを探り出す質問を投げかけその答えに耳を傾ける。否定的勘ぐりは避ける
  • メンバーに対して自分が何を考えておりどのように感じているのかを話す
パースペクティブ・テイキング (Perspective taking)
  • 全員に対して結論と同意見かどうかを尋ねる
  • 発言しないメンバーにあなたはどのように思うかと質問する
  • あまりに早急に出された決定には疑問を抱く
  • 誰かを指名し相手を称える役を演じさせる
感情を制御させる規範
対峙するための規範
  • 原則を設けこれを逸脱した行為を指摘する

  • なぜこのような行動を取ったのかその説明を求める

  • ユーモアあふれた方法ででこのような行動を指摘する。これはグループ内から自然と湧き出ることがよくある。それに肉付けを図る

親身になるための規範
  • メンバーをサポートする。必要とあらば手助けを申し出る。また柔軟に精神的サポートを提供する

  • メンバーの貢献を認める。メンバーに彼らが貴重な存在であることを伝える

  • メンバーを攻撃から守る

  • バランス感覚を持って個性と perspective の違いを尊重する。よく話を聞く

  • 軽蔑的であったりメンバー貶めたりする態度とらない

グループレベルでのチームビルディングのための行動規範

感情を意識させる規範
グループの自己評価
  • チームの有効性を検証するための時間を設ける
  • 課題の評価項目とプロセスの目標を設定し評価する
  • グループの雰囲気を認識しそれについて話しあう
  • チームに漂う雰囲気を自分がどのように感じているかを伝える
  • メンバーにプロセスチェックをさせる。例えば、「プロセスチェックをしますこれが現在我々の時間を最も有効に活用する方法なのでしょうか」と問う
フィードバックを求める
  • 顧客に自分たちの仕事ぶりをどのように思うのかを尋ねる
  • 作品や作業内容を展示し、コメントや意見を求める
  • プロセスについてベンチマーキングして評価する
感情を制御させる規範
感情に対処するための「経営資源」を創造する
  • 別途時間を設けて困難な問題を話し合いそれに絡。感情に対処する
  • グループ内の感情を認識し表現するために、創造的かつスピーディーしかも簡単な方法を探りだす
  • 楽しみながらストレスと緊張感を意識し解消する方法を生み出す
  • メンバーの感情を受け入れた事を伝える
肯定を是とする環境を整える
  • 自分達は何であろうと解決できると力説する。楽観的になる。例えば「大丈夫乗り越えられるさ」、「達成は確実」と勇気づける
  • セルフコントロールする事に集中する
  • 他メンバーに重要かつ肯定的なグループのミッションを思い出させる
  • グループに過去に同様な問題をどのように解決したかを思い出させる
  • 誰かを非難するのではなく問題解決に焦点を当てる
能動的に問題解決にあたる
  • 問題を予期し、事前に対処する
  • 効果を生み出すには何が必要なのか自ら進んで理解しそれを手に入れる
  • 他者が反応しないならば自ら率先して解決にあたる。他者ではなく自分を頼る

グループ外レベルでのチームビルディングのための行動規範

感情を意識させる規範
組織の理解
  • 社内の他者や他グループから懸念やニーズを探り出す
  • グループの目標達成に影響を及ぼすのは誰かを考える
  • 社内の文化や風土及び社内政治について話し合う
  • チームが提案している行動は企業文化や社内政治と調和するものかどうかを尋ねる
感情を制御させる規範
対外的な関係を築く
  • ネットワークを広げ他のグループと対話する機会を設ける
  • 他のグループのニーズを訪ねる
  • 他のグループをサポートする。グループ活動と利害関係にある第三者や他グループが存在するならばこれらを会議に招く
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