企業内で人材育成に携わる人に、ちょっと変わった視点から問題提起をしてくれるのがこちらの本です。

シュロモ・ベンハー著、企業内学習入門 戦略なき人材育成を超えて

人材育成の世界では著名なセンゲの学習する組織<ラーニング・オーガニゼーション>を「失敗」とぶった切っているのは、それはそれで分からなくもありません。

一方で、本書も、「コンセプトそのものは分かるけれど、具体的にはどうやるの?」という疑問を持つ箇所も散見され、隔靴掻痒の感もあります。典型的には159p、「サプライヤーの仕事ぶりをきちんと査定すること」という言葉がありますが、これってけっこう難しいですよね。

問題提起自体は間違いないものなので、考えさせてくれる一冊と言えるでしょう。

【コンテンツ面のポイント】
●「学習する組織」失敗の3つの理由
1.実際の運営システムやプロセス、慣習の中では実現不可能なものだった
2.成果ではなく学習プロセス自体に重点をおいていたため、目標を組織の優先事項や戦略に明確につなげるのが難しかった
3.「学習する組織」のロジックの方向性と、現実の政治・経済環境の方向性とはまったくバラバラだった

●ラーニング部門の主要な5つの課題
1. 信任をともなうミッションの制定
2. スコープの特定
3. 社内におけるラーニング部門のポジショニング
4. ラーニング部門の運営モデル
5. サービスのポートフォリオの構築

●ゲーム型…学習法が企業環境において機能するという調査結果が十分でないにもかかわらず
Blunt, R (2007) Does Game-Based Learning Work? Result from Three Recent Studies. The Interservice Industry Training Simulation Educatoin Conference IITSEC

●イベント終了後に「学んだことがこの先役に立つと思うか」と聞かれたときの反応(いわゆる有効性反応)は、学習テストと同様、その後の仕事ぶりを占うものではないとされている
Alliger, G.M. et.al., A Meta-Analysis of the Relations among Training Criteria. Personnel Psychology, 50

●学習評価の行動への指針
1. インパクトの測定に全力を注ぐ
2. 評価項目について事前にビジネスサイドと申し合わせておく
3. ビジネス目標に直結した評価指標を用いる
4. シンプルな手法を心がけ、できれば既存の評価指標を利用する
5. データの扱い方について前もって計画を立てておく
6. 評価活動の主導権を握り、かつ作業を分担する

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