研修を提供する中、「企業文化って変わるんですか?」というご質問をいただくことが多くなりました。ここでは、研修と企業文化について、当社の経験も交えながら考察しています。
時間はかかるがそれでも変わる企業文化
まず結論ですが、企業文化は変わります。実際、当社が10年来お付き合いしているクライアントでは、昔と今では文化が明らかに変わってきています。以前はどちらかというと、よく言えば着実、悪く言えば鈍重な文化が、最近では業界の変化に合わせてより柔軟に物事を進めるものになっています。実はこの会社、社員数何万人という大組織で、研修を提供した当初は、「大きな組織はやっぱり変わらないんだ」と思っていました。ところが、「継続は力なり」ではないですが、しっかりとしたポリシーを持って続けていると、4-5年目ぐらいから文化が変わっていく様子が手に取るように分かりました。
まるで、てこでも動かない大きな岩が、小刻みに・小刻みに、でも絶え間なく揺すっていると、あるとき突然グラッと動き出したようなもので、感動と共にそこまで続けた経営陣に畏敬の念を覚えたものです。
数万人の組織ですらこうですから、もっと規模が小さい組織ならばより早く「変わってきた」という実感を持てるでしょう。
企業文化を変えるための価値観の成文化
では、その企業文化を変えるには何が必要か?
これも結論から述べると、「ありとあらゆること」です。たとえば上記の会社は「社内運動会」を復活させましたが、これも企業文化を変えるための一環です。社員の方からは「なんで今更、社内運動会?」と違和感すらあったようですが、経営陣は、他にも文化変革のための様々な打ち手をとっており、その中でも比較的メッセージ性が高く目につくものが社内運動会だったのです。つまり、トップ・マネジメントの「絶対に変える」という強い決意(コミットメント)の下、ありとあらゆる手を尽くすことが、企業文化を変えるには必要です。
あえてその中でも重要なものを挙げると、自分たちの価値観を成文化することです。「ミッション」や「ビジョン」、あるいは「バリュー」と言われますが、自分たちの価値観を言葉にして共有し、それに沿った行動をとるように人材を意識づけ、同期づけることは、企業文化の変革には欠かせないプロセスです。
GEバリューに沿った行動が文化を変える
たとえば、有名なところで言えば米国ゼネラル・エレクトリック (GE)。
GEには「GEバリュー」と呼ばれる日々の行動を律する言葉があり、2017年現在では下記になっています(呼び方も、GEビリーフスと変わりました)。
- Customers Determine Our Success(お客さまに選ばれる存在であり続ける)
- Stay lean to go fast (より早く、だからシンプルに)
- Learn and adapt to win (試すことで学び、勝利につなげる)
- Empower and inspire each other (信頼して任せ、互いに高め合う)
- Deliver results in an uncertain world (どんな環境でも、勝ちにこだわる)
これらのバリューによって個々の社員の行動が変わる、個々の社員の行動が変わればその集合体として文化が変わる、これを実践しているのがGEなのでしょう。
企業文化を変える研修とは
なお、文化を変えることをねらっている企業では、研修のあり方もこれまで違ってきています。もちろん、研修の中での学びは当然あります。ロジカルシンキング研修ならロジカルシンキングの、プレゼンテーション研修ならプレゼンテーションの、新たな学びと行動を身につけていただくのは当然です。ただ、それに加えて、「ウチの会社の文化はどのようなものか」、「その文化は現状のビジネス環境で適切か」、「どのような部下が本当はふさわしいのか」などを話し合うパートを設けて、企業文化への感度を高めていただきます。
そして、時間に余裕があるときには、「自分たちでバリューを考える」ことにもトライします。もちろん、バリューが全社的に決まっている場合もあるでしょう。しかし、自分たちの属する部や課ごとにバリューを成文化するというのは、実は企業文化を考える、もしくは変える大きなきっかけになります。
とはいえ、全くの手がかりなしで、いきなり「バリューを考える」というのも難しい話。そこで私たちは、「バリューの3分間クッキング」という方法論を提唱しています。お料理番組に想を得たものですが、材料はもうそろっているはず。つまり、一人ひとりが職場の体験から、「もっとこういう組織になればいいのに」という想いはあるはずです。それを形にして文章に落とし込むことは、慣れればそれこそ3分間でもできます。ポイントは、実は「普段の仕事で怒りを覚えたこと」からスタートすること。「怒り」というのは、自分の価値観にあわない行動から生じるわけですから、ここをきっかけに逆にポジティブな表現を探ると、自分がホンキで実行したいバリューが言葉になるのです。