「スポーツの世界からチームビルディングを学びたい…」。そう思ったときに手にとりたいのがジェフ・ジャンセン氏の「最強をめざすチームビルディング―潜在成長力を引き出すコーチの取り組み」です。
スポーツチームで使うアクティビティ
著者のジャンセン氏は米国で「ジャンセン・スポーツリーダーシップセンター」を主催している、チームビルディングのプロ。チームワークに悩むスポーツチームにアドバイスをしながら、独自の理論を練り上げています。したがって本書でも、アメリカにおけるスポーツ界の「レジェンド」の言葉がちりばめられていて、そっち系が好きな方は思わずニヤリとしてしまうでしょう。
著者のジャンセン氏発案のチームビルディング・アクティビティをいくつか紹介します(詳しくは本書199pあたりを)。
人間ビンゴ
いわゆるビンゴを元にしたものですが、紙に穴を空けるのは数字ではなくてそのチームのメンバーの特徴です。
- 2匹のシベリアン・ハスキーを飼っている
- 今年の夏にアラスカ旅行をした
- 全米で最大の刑務所のひとつがある州で生まれた
などをマス目上に並べておき、「これは彼かな」、「これは彼女だろう」とクイズのような感覚で当てていき、ビンゴを作るというものです。
ゲーム感覚でチームメンバーの意外な要素を知ることができて面白そうです。
ポジション交代
お次はスポーツならではですが、例えば野球のチームだったら内野の選手が外野をやる、ピッチャーとキャッチャーが交代するなど、自分の「本職」以外のポジションを練習すると、お互いの理解が深まるとのこと。
これはビジネスにおけるチームビルディングにも使えて、1日だけ仕事の役割を変えてみると、いろいろと発見がありそうです。その人のやっている仕事を実際体験してみると、その難しさ、逆に、何があったら仕事がやりやすくなるのかが分かりますから、チームワークが上がるのは間違いないでしょう。
家族写真のアルバム
これは著者のジャンセン氏ではなく、スポーツ心理学者のニーナ・エリオット氏の発案によるものだそうですが、選手の家族や友人と撮った写真をお互いに見せ合いながら、家族や友人について数分間づつ話させるというものです。これも、その人の意外な側面が見えてきて、共感を育むのに役立つ手法と感じました。
チームビルディングの7C
具体的なチームビルディングのゲーム以外にも、本書はより大所高所の視点からのフレームワークも提示しています。それが、「チームビルディングの7C」で、「チャンピオンチーム」、すなわち継続して成果を上げるチームに備わっている特徴です。
- 共通目標 (Common Goal)
- コミットメント (Commitment)
- 特別な役割 (Complementary Roles)
- 明瞭なコミュニケーション (Clear Communication)
- 前向きな対立 (Constructive Conflict)
- 選手の結束 (Cohesion)
- 信頼されるコーチング (Credible Coaching)
そして、著者のジャンセン氏は、これをアンケート形式でチェックすることを進めています。
共通目標
- チームにはシーズンを通して追求する明確な達成目標が決められている
- チームにはシーズンの初めに決めた目標の達成能力と可能性を持っていると確信している
- みんなで決めたチーム規範は目標達成に役立つと思う
- チームの全員がチームの同じ目標に向かって頑張っていると思う
コミットメント
- チームにはメンバーとしての強い責任意識がある(その意志が薄弱なものはいない)
- 練習開始時刻よりも早く来るものがいるし、練習が終わっても自ら居残り特訓をやる者もいる
- ほぼ全員の者がチームの勝利を究極の目標としている
- チームに問題が起き逆境に立たされても辛抱強く凌いでいる
特別な役割
- 選手はチームの役割のためにプレーしなければならないことを明確に理解している
- コーチも選手も控え選手役をはじめ全ての役割についてその価値を認めている
- チームの全員が自分に与えられた役割を受け入れて同意してその役割を果たしている
- 選手はそれがチームのためになるなら個人の犠牲を厭わない
明瞭なコミュニケーション
- コーチと選手との間のコミュニケーションは率直で、透明性があり効果的だ
- 選手同士のコミュニケーションも率直で透明性があり、効果的だ
- 大会のゲームなどにおけるコミュニケーションは効果的にできている
- コーチと選手はお互いの言うことによく耳を傾けて雰囲気もお互いに気を配っている
前向きな対立
- チームは揉め事が起きて対立が表面しても次に繋がるようにまとまる
- 選手は普通お互い些細な相違があることに納得し合っている
- 選手はお互いを信じあっており、影でコソコソと囁き会うようなことはしない
- 試合にはコート外での個人的ないがみ合いは絶対に持ち込まない
選手の結束
- ゲームや練習が終わった後でも仲間と一緒に過ごすことは嫌ではない
- 選手たちは概ねお互いを尊敬しあい、信頼しあっている
- 外部から批判を受けたりすると、お互いにカバーしあって支え合う
- 仲間たちが問題を抱えている時にお互いがヘルプし、気を配り合う
信頼されるコーチング
- 選手はコーチのことを信用ができてん能力があり、気を使ってくれる人だと信じている
- コーチ達はチームには概ね好意的だ
- チームには選手やキャプテンの、を飲まして逞しく、積極的なリーダーシップがある
- コーチはチームが目標達成に向かうのを力強く後押ししてくれる状況を作ってくれる
チームビルディングは目標設定から
チームワークの「成功の柱」
チームビルディングの7Cから、目標設定に関してみてみましょう。ここで使われるのは、「パフォーマンス・プロファイリング」と呼ばれる手法です。これは、Butler氏とHardy氏が1992年の論文、「The performance profile: Theory and application」(The Sport Psycologist)の中で提唱したもので、
目的を達成するために必要なあらゆる要素を抽出し、列挙する方法である。この手法を用いてチームにブレインストーミングをさせて成功するチームに欠かせない要因をリストアップして議論させる。私たちはそれらの要因を成功の柱と呼ぶことにしている。チームが高い目標を達成するためには、それぞれの柱が高くて頑丈でなければならない。柱と呼ぶのは、もしその柱が十分に成長せずに頑強でなかったら、チームは目指すところの高さまで到着することはできないからである。選手に、成功の柱の特徴は何かについて話し合わせてそれぞれの意味するところを明確に定義づける。そしてその柱が、練習、コンディショニング、授業、メンタルトレーニング、ゲームなどの中でどのように具体化されていくのか選手に考えさせるのである
というものです。これはいわば、メンバー自身に目標を設定させるようなもので、目標管理制度(MBO: Management By Objective)にも似たところがあるような気がします。
もちろん、ビジネスと同じように、それらの行動を数値目標として設定することを著者のジャンセン氏は提唱していて、その際に使うのが目標達成のための5つの方法です。
- 目標をコントロールできる大きさに細分化する
- 目標に結びつく質の高い練習を確保する
- 成果に投資する
- 歯医者を勝者に変える目標を設定する
- 必要に応じて目標を調整する
画像はアマゾンさんからお借りしました
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