こんにちは。シンメトリー・ジャパン代表の木田知廣です。部下の動機づけ<モチベーションUP>が下手な上司の共通点をご存じでしょうか?それは、自身の「経験則」だけに頼っているということ。「自分は、こうやってやる気を出した」、「こんな体験が自分には転機だった」…。でも、時代は変わりました。今や部下のキャラもさまざまですから、上司の体験がいつまでも通用するはずもありません。
では、どうしたらよいか?この解決策を紹介する研修を私たちは提供しています。欧米での最新の研究にもとづいた方法論の数々、現場で使えばその効果を実感できるはずです。「組織として」モチベーションアップに取り組みたい方は、下記よりお問い合わせください。
シンメトリー・ジャパン代表
講師
木田 知廣 (KIDA, Tomohiro)
シンメトリー・ジャパン株式会社 代表
大学卒業後、米国の名門コンピュータ会社DECで働き始めるも、IT業界の再編の波を受けて同社は消滅。退職を余儀なくされる。この経験をきっかけに、会社が倒産しないための「まっとうな組織」とは何かの模索を始め、その答が「人材マネジメント」であった。
この分野で研鑽を積むべく、人事コンサルティング会社タワーズワトソンの門を叩く。その後、MBA取得を目指して渡欧。2001年にはロンドン・ビジネススクールでMBAを取得した後、グロービスにて講師としてデビューする。
2006年、シンメトリー・ジャパンを立ち上げて代表に就任し。本物のチームビルディングの理解を普及することに力を入れている。2012年からは米国マサチューセッツ大学でも教鞭をとる。
ライフモットーは、”Stay Hungry, Stay Foolish” (同名のブログを執筆中)
動機づけ理論集
現場では使えないマズローの欲求段階説
部下の動機づけというと清く出てくるのが米国の心理学者エイブラハム・マズローが提唱した「欲求段階説」。しかし、この説が発表されたのは1943年。現代日本においては、必ずしも当てはまらない状況が出てきます。たとえば、下位の欲求とされる生理的欲求や安全欲求。よほどのブラック企業でもない限り、これらは既に満たされているでしょう。全面否定するつもりはありませんが、マズロー「以外」の欲求を探るアプローチがお勧めです。
低位欲求の理解と満たし方
マズローの理論によると、低位欲求は外的要因によって満たされます。まず、生理的欲求は基本的な肉体的ニーズであり、空腹や渇きの解消が含まれます。企業においては、適切な給与や福利厚生がこの欲求を満たします。次に、安全的欲求は、物理的および精神的な安全を求めるものであり、職場の安全性や雇用の安定がこれに該当します。社会的欲求は、愛情や帰属意識を求めるものであり、チームビルディングや社内コミュニケーションが重要です。
高位欲求の重要性とその影響
高位欲求は内的要因によって満たされます。自尊的欲求は、達成感や認識を求めるものであり、表彰制度やキャリアアップの機会が効果的です。最も高次の欲求である自己実現的欲求は、自分がなりたい自分になることを目指す欲求であり、自己啓発やチャレンジングなプロジェクトがこれに応えます。リーダーは、これらの高位欲求を理解し、従業員が自己実現に向けて成長できる環境を提供することが求められます。
ハーツバーグの動機付け-衛生理論が示す職場満足度の向上方法
職場における従業員の「満足」と「不満足」は異なる概念であるという視点を提供したのが、フレデリック・ハーツバーグの動機付け-衛生理論です。1959年の論文「The Motivation to Work」で提唱されたこの理論は、従業員の満足度向上のための重要な示唆を与えています。
「満足」と「不満足」は別の概念
ハーツバーグの理論によれば、「満足」の反対は「満足していない」であり、「不満足」の反対は「不満足ではない」です。これは、職場での不満要素を取り除くだけでは、従業員が必ずしも満足するわけではないことを示しています。
不満足の要因:衛生要因
不満足は、管理・監督のされ方、対人関係、作業条件、給与などの衛生要因によって引き起こされます。これらの要因を改善することで不満を減らすことはできますが、それだけでは従業員のモチベーションを高めることはできません。
満足の要因:動機付け要因
一方、従業員の満足は、達成感、表彰、仕事そのものの充実感、責任の付与、昇進などの動機付け要因によってもたらされます。これらの要因を強化することで、従業員はより高い満足感とモチベーションを感じることができます。
実践への応用
ハーツバーグの理論は、現場のマネージャーに広く普及しており、職務の高度化や動機付け要因への注目を促しています。職務の高度化とは、従業員により多くの責任や成長の機会を与えることで、動機付けを高めるアプローチです。
まとめとして、ハーツバーグの動機付け-衛生理論を活用することで、職場の満足度を効果的に向上させることが可能です。不満要因を取り除くだけでなく、従業員がやりがいを感じる要因を強化することで、持続的な動機付けと高い職場満足度を実現しましょう。
ブルームの期待理論とは?
ブルームの期待理論とは?
ブルームの期待理論(エクスペクタンシーセオリー)は、動機づけに関する重要な理論の一つです。1964年にヴィクター・ブルームによって提唱され、主に職場での従業員のモチベーションを理解するために用いられます。この理論では、従業員がどのような行動をとるかは、彼らがその行動によって得られる結果に対してどれだけの期待を持っているか、そしてその結果がどれほど望ましいものであるかに依存するとされています。
期待理論の三つの要素
期待理論は三つの要素から構成されています。まず、「期待感」(エクスペクタンシー)とは、特定の行動が特定の成果をもたらすと信じる度合いです。次に、「道具性」(インストゥルメンタリティ)は、その成果がさらに別の成果(たとえば報酬)につながると信じる度合いです。最後に「価値」(ヴァレンス)は、その最終的な成果や報酬が個人にとってどれだけの価値があるかを示します。
期待理論の実践的活用
企業でこの理論を活用するには、まず従業員が望む成果を明確にし、それが達成可能であるという期待感を高める必要があります。また、業績が報酬や昇進などに直結することを示すことで、道具性を強化します。最後に、従業員にとって報酬が魅力的であるようにし、価値を高めることが重要です。これにより、従業員のモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
期待理論を活用した目標設定の工夫
ある企業では、営業チームのパフォーマンス向上を目指し、ブルームの期待理論を活用しました。具体的には、個々の営業担当者が目標を達成することで得られる具体的な報酬を明示し、その達成可能性を高めるためのサポート体制を強化しました。例えば、月間売上目標を達成した場合に、ボーナスや昇進の機会が提供されることを明確にし、これが実際に実現可能であると信じさせるために、必要なトレーニングやリソースを提供しました。
期待感(エクスペクタンシー)を高めるフィードバックの導入
さらに、チーム全体での達成感を共有するため、定期的なフィードバックセッションを導入しました。これにより、営業担当者は自分の努力がチームの成功にどのように貢献しているかを実感し、期待感を強化しました。結果として、個々のモチベーションが向上し、チーム全体の売上が前年比20%増加しました。
価値を高める柔軟な報酬制度
最後に、報酬制度を見直し、個々の社員が価値を感じる報酬を選べる柔軟なシステムを導入しました。これにより、報酬の価値が高まり、期待理論に基づく動機づけが一層強化されました。結果として、目標達成率が飛躍的に向上し、企業全体の業績も上昇しました。
「進捗の法則」でモチベーションを高める方法
仕事において「やりがいを感じる進捗」は、モチベーションアップの鍵となります。進捗を感じることで「私はやればできる」という自己効力感が高まり、内発的動機がアップします。これは外発的動機(例えば報酬など)では得られない深い満足感をもたらします。
進捗の重要性
研究によれば、やりがいを感じる仕事の進捗はモチベーションを最も効果的に高めます。進捗を感じることで、自己効力感が高まり、内発的動機付けが促進されます。この効果は、外発的動機(報酬や称賛など)に頼らず、仕事そのものへの興味や満足感を高めることができます。
上司の役割
部下のモチベーションを高めるためには、上司が進捗を感じられるように工夫することが重要です。以下の方法を試してみてください。
- フィードバックの強化:進捗が見えるような具体的なフィードバックを行いましょう。「この部分はうまく進んでいる」といった具体的な言葉を使い、部下に進捗を実感させます。
- 仕事のブレークダウン:大きなプロジェクトを小さな作業に分解し、各ステップにチェックポイントを設けます。これにより、部下は小さな成功を積み重ねることができ、自己効力感が高まります。
進捗管理とモチベーションの一石二鳥
進捗を細かく管理することで、モチベーションアップと同時に仕事の進捗管理も効率的に行えます。進捗が遅れている理由や遅れを取り戻す方法に焦点を当てるのではなく、進捗している部分を強調することが重要です。これにより、部下のモチベーションを維持しながら、全体のパフォーマンスを向上させることができます。
目標設定理論で従業員のモチベーションを高める方法
目標そのものが作業への動機付けの重要な源泉となります。しかし、効果的な目標設定にはいくつかのポイントがあります。1990年にLockeが提唱した論文「Toward a Theory of Task Motivation and Incentives」に基づき、以下の4点に留意することが重要です。
目標の難易度
従業員が目標を受け入れる度合が同じならば、目標が難しくなるほど成績が向上することが研究で示されています。高い目標はチャレンジ精神を刺激し、達成感を高めます。
目標の具体性
具体的な目標は抽象的な目標よりも成績を向上させる効果があります。明確なゴールがあることで、従業員は具体的な行動計画を立てやすくなります。
目標の受け入れ度合
やさしい目標の方が受け入れられやすいですが、これは必ずしも成績向上には繋がりません。重要なのは、目標が現実的であり、かつ挑戦的であることです。
従業員の目標設定への関与
従業員を目標設定の過程に参加させることで、目標を受け入れやすくする効果があります。自分自身が設定に関与した目標には責任感を持ちやすく、動機付けが高まります。ただし、目標設定への関与そのものが直接的に成果のレベルを向上させるわけではありません。
効果的な目標設定を実現するためには、これらのポイントを踏まえ、従業員一人一人の意見を取り入れながら、具体的でチャレンジングな目標を設定することが重要です。これにより、従業員のモチベーションが向上し、組織全体のパフォーマンスも高まるでしょう。