「オレって、ここ一番て時に力を出せないんだよなぁ」 スポーツの世界に限らず、ビジネスで勝負を続けるリーダーの中には悩みを持つ人は多いでしょう。プレッシャーに弱いとでも言うか… 。そんなリーダーが手に取ってしまうかもしれないのが林成之先生のご著書、「<勝負脳>の鍛え方」です。

勝負脳とは勝負に勝つための戦略を練る知能 

まず、書名にも入っている「勝負脳」です。これは著者の林成之先生の造語で、

勝負に勝つための戦略を練る知能

とのこと。これだけ聞くと、「あ~、よくあるやつね」と思うかもしれませんが、本書が類書と違うのは、著者の実績。著者の林成之先生は、脳神経外科で、数々の手術を成功させてきた方とのこと。要するに、「成功するためのルール」を脳科学の立場から検証していて、読みながら、「ふむふむ、なるほど」と納得すること請け合いです。

たとえば、「こうすれば頭はよくなる」と題された章では、脳の機能(能力)を下記の4つに分けています。

  1. 知識を脳に取り込む能力
  2. 知識を脳内で再構築する能力 (イメージ記憶力)
  3. 表現する多重知能の能力
    • 言語知能
    • 運動知能
    • 理論知能
    • 音感知能
    • 空間認知知能
    • 計算知能
  4. 独創的創造能力

そのうえで、

知識を脳に取り込む勉強だけでは頭が良くならないのは、4つの段階のうち1つしか鍛えていないためである

と提唱しています。

勝負脳を全開させる九つの秘訣

では、具体的に勝負脳の鍛え方ですが、著者の林成之先生は「勝負脳を全開させる九つの秘訣」を提唱しています。

  1. サイコサイバネティックス理論を応用せよ
  2. 最初から百パーセント集中せよ
  3. 相手の攻撃は最大のチャンス
  4. 相手の長所を打ち砕け
  5. 相手の立場になって勝ち方のイメージをつくれ
  6. 脳の温度上昇に要注意
  7. 脳の疲労は勝負の大敵
  8. 勝負の最中にリラックスするな
  9. 緊張しすぎた時の対処法

この中から、一番目の「サイコサイバネティックス理論を応用せよ」をみてみましょう。これは簡単に言うならば、

  1. 目的と目標を明確にする
  2. 目標達成の具体的な方法を明らかにして実行する
  3. 目的を達成するまで、その実行を中止しない。

という方法論です。一見ありきたりですが、

しかし私たちは日常、こんな簡単なことさえできない生き方をしているのです。

と著者は警鐘を鳴らします。

より具体的なアドバイスが欲しい

と言うことで、脳神経外科の専門家の提言、興味深くはあるのですが、なかなか実行が難しい、というのが正直な感想です。例えば、「目的を達成するまで、その実行を中止しない」と言われても、できる人はごくまれでしょう。

そうではない、一般の人間にもできるような、より具体的な方法論があると、本書を読む意味があったかもしれません。

以下、ポイントを。

●「ものごとを学習することは人間が生き残るために必要な本能だからです。だからほかのさまざまな本能のように、快感とセットになっているのです」

●「日々叱られながら訓練を続けていると、人間は人の話を聞かないようになり、その結果、話を集中して聞く能力が衰え、頭も悪くなって覚える力や思い出す力が弱くなり、自分で創意工夫して解決していく力も養われなくなるのです」

●勝負脳を全開させる秘訣
相手の長所をうち砕け
緊張したときには
屈筋と伸筋を意識する(笑顔の練習)
結果を意識せずに、プロセスを意識する → 自分にコントロールできないものには反応しないと同じか?

●脳の疲労を除去するために
疲労の解除命令を出す機能部位は、前頭眼窩野にあり、言語を司るブローカ言語中枢や、嗅結節と関連している

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