「せっかく入社した若手が3年間で辞めてしまう…」。そんな悩みをお持ちの方がチェックしたいのが尾形真実哉先生のご著書「組織になじませる力~オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ」です。

オンボーディングに必要な組織になじませる力の5つの要素

オンボーディングという言葉、米国ではすっかり市民権を得ていますが、日本ではなじみがないかもしれないので、まずは言葉の説明から。著者の尾形真実哉先生によると、

オンボーディング(on-boarding)とは、船や飛行機に乗っているという意味です。新卒採用者であれ、中途採用者であれ、会社という「乗り物」に新しく加わった個人を、同じ乗組員としてなじませ、一人前にしていくプロセスのことを指します。

とのこと。考えてみれば、飛行機のチケットのことは「ボーディングパス」といいますから、ボーディングはまさに乗り物に乗せるというニュアンスでしょう。このオンボーディングのために必要なのが「組織になじませる力」で、下記の5つからなると著者の尾形真実哉先生は提唱しています。

  1. 仕事の知識やスキルを円滑に習得させることができる力
  2. 会社の理念や文化、暗黙のルールなどを理解させ、体現させることができる力
  3. 良質で、広範な人間関係を構築させることができる力
  4. 会社に貢献できる高いパフォーマンスを発揮させることができる力
  5. 常に成長実感を与え続けることができる力

この5つの要素を見ると、オンボーディングはエンゲージメントと極めて近しい関係にあると観じました。オンボーディングとは、新しく組織に入ってきた人のエンゲージメントを高める活動であるといっても間違いではないでしょう。

オンボーディングのフレームワーク

著者の尾形真実哉先生は、オンボーディングの活動全体を下記の3つのステージに分けてフレームワーク化されています。

  • インフォーム行動
    • コミュニケーション:新しく組織に参画した人とのコミュニケーションを促進する計画された活動-ワンウェイメッセージの提供と対話の機会の双方を含む
    • リソース:新たに組織に参画した人が利用できる道具や援助を用意する
    • トレーニング・プログラム:スキルや行動、知識の体系的な獲得を促進する計画された行動
  • ウェルカム行動:新しく組織に参画した人に組織内の他のメンバーと会う機会を与えること、あるいは歓迎すること
  • ガイド行動:新しく組織に参画した人に個人的なガイド役を割り当てる

なお、このフレームワークは海外の研究者、Klein and Polinの論文を元に作成されているせいでしょうか、若干ピンとこない感があります。例えば、「コミュニケーション」のパートでは、下記が提唱されています。

  • 上司と質疑応答できる会を設ける
  • 上司は新しく組織に参画した人のためにまとまった時間を確保する
  • 人事部長や人事部員と顔を合わせる

など、要するに対話のための時間をとりましょうということで、何だか当たり前すぎて肩透かし感があります。

定着率、パフォーマンスに効果があるオンボーディング

では、オンボーディング施策が実際にどのくらいの効果があるのかを見てみましょう。それが、本書30pに掲載されている調査結果です。転職サイト運営会社エン・ジャパンとの協働で行った調査とのことですが、中途採用を行っている企業416社にアンケート調査を行い、オンボーディングに力を入れているか否かの結果が下記になります。

力を入れている 29社
どちらかといえば力を入れている 141社
どちらかといえば力を入れていない 126社
力を入れていない 96社

この中から、オンボーディングに力を入れている、どちらかといえば力を入れていると回答した会社を「力を入れている群」、どちらかといえば力を入れていない、力を入れていないと回答した会社を「力を入れていない群」として、中途採用者の定着率とパフォーマンスを調べた結果が下記となります。

中途採用者定着率

カテゴリー 企業数 平均値
力を入れている群 170 3.20
力を入れていない群 222 2.82

中途採用者パフォーマンス

カテゴリー 企業数 平均値
力を入れている群 170 3.25
力を入れていない群 222 3.01

この「平均値」が何を意味するかは本書から読み取ることはできないのですが、定着率、パフォーマンスでオンボーディング施策は有益な効果があると言えそうです。

尾形真実哉 著、組織になじませる力~オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ
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