「チームビルディングを科学的に解明したい…」。そんな方に手にとって欲しいのが、「ハーバード・ビジネス・レビュー チームワーク論文ベスト10 チームワークの教科書」よりペントランド先生の論文「チーム作りの科学」です。
チームビルディングの3要素
著者のペントランド先生曰く、チームワークのキモはコミュニケーションである、と。しかも下記の3つによってそのチームの成否が決まるとか。
- コミュニケーションの「熱量」
- チーム全体への「関与」
- 外の世界へと向かう「探索」
…と、ここまでだったら「あ~、ありがち」なのですが、この論文の面白いのはこれが科学的に導き出されていること。具体的には、オフィスのメンバーに特殊な「バッジ」をつけてもらい、これで会話量などを測定しているのです。
このバッジは(中略)1分間に100ものデータを収集するので、我々は「人々の自然な振る舞いをとらえているはずだ」と自負している。(中略)この7年間に21組織、合計でおよそ2500人にバッジをつけてもらい、コミュニケーションの特性を把握した。
とのこと。ちなみに日本では矢野和夫先生が、「データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」で同じような手法を紹介されています。ただ、日本でバッジをつけることへの抵抗感が強いという記述があったような気がします。米国の方が、まだ抵抗感が少ないのでしょうか。
外部への関心が高いチームパフォーマンスにつながる
本題に戻って、チームワークをよくするコミュニケーションの3要素がどのようなものか見てみましょう。まず「熱量」。これは、
各チームメンバーについて、やりとりの数にコミュニケーションの効果をかけ合わせて熱量を算出し、チーム全員のスコアを合計して人数で割れば、それがチームの熱量である。
とのこと。この熱量が高ければ高いほどチームワークがいいというのは想像できます。
お次のチーム全体への「関与」は、チームメンバーがどのくらい均等にコミュニケーションをとっているかの指標です。たとえば、投資判断に関しても、
一部のメンバーしか関与していないチームは、全員が関与したチームと比べて投資収益が少なかった
という結果があるそうです。
最後の「探索」は、ちょっと面白い概念で、チームメンバーが自チーム以外の人とコミュニケーションをとる傾向だそうです。高いパフォーマンスを上げるチームというのは、自チームの中だけで閉じているのではなく、外とつながろうという意識が強いというのはちょっと意外な発見です。
チームビルディングにはビールよりもランチ
では、どうやってチームビルディングを実現するかという具体的な施策があるのも本論文のいいところです。ちょっと長くなりますが引用してみましょう。
ある新興ソフトウェア企業のマネジャーは、たとえば「ビールを片手に語らう会」のようなイベントを開催すれば、従業員同士のコミュニケーションを促進できるだろうと考えた。しかし、電子バッジのデータによると、ほとんど効果はなかった。これとは反対だったのが、社内食堂での実験だった。社内食堂の長テーブルに、見知らぬ従業員同士を隣り合わせにしたところ、めざましい効果が表れた。
意外なぐらい簡単な方法がチームワークをよくするというのは、大きな発見ではないでしょうか。
なお、本書には、上記のバッジによる調査結果が分かりやすい図解で紹介されています。とくに、コミュニケーションの時系列図解を示した図はなかなか示唆に富んでいるので、この分野に興味がある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
画像はアマゾンさんからお借りしました。
前ページ 第3回 斉藤 秀樹 著IT現場を強くする 究極のチームビルディングを読む |
次ページ 第5回 J.リチャード・ハックマン著チームワークの嘘を読む |
|
---|---|---|
ゲームで学べるチームワークのページに戻る |