「労働組合のことを子供にどう伝えよう…」。そんな風に思うときに手にとってしまうかもしれないのが上西充子先生監修の「ワークルールってなんだ? (10代からのワークルール) 」です。
ブラックバイトを避けるための入門書
サブタイトルに「10代からのワークルール」とあるとおり、
本シリーズは、中学生や高校生の皆さんが将来アルバイトや社員として働くときに、必要となる「ワークルール」について、分かりやすく解説するものです。
とのこと。最近は「ブラック企業」のみならず、「ブラックバイト」や「やりがい詐欺」などの言葉に表されるように、若者を搾取するような職場もあるようですから、若いうちから理論武装していくのは大事なことなのでしょう。
一方で、アルバイトによる不適切なSNS投稿が問題になることもあり、自らの権利を主張するだけでなく、まっとうに働くための「ワークルール」という観点でも本書の意義はあると思いました。
労働法はいつ、どうやってできたのか
本書においては、そもそもとして、「労働法はいつ、どうやってできたの?」という疑問に答えています。いわく、
市民革命で生まれた「個人の自由」の考え方が、今度は会社と労働者との契約に持ち込まれた結果、「長時間労働も個人の自由による契約だから」、「安い賃金も個人の自由による契約だから」という理屈で、すべて認めさせられ、劣悪な労働環境を招いてしまったんだ。こうした問題を解決するために、労働法が誕生することとなったんだよ
とのこと。なお、本書は全体に問答調で記述が進められているため、上記のような口語口調になっています。これも、中高生向けに分かりやすく説明するという工夫の一環でしょう。
労働組合とは
本書では労働組合についても触れられています。端的に、
労働組合とは、労働者が労働環境の改善や生活の維持・向上などを会社に要求するための団体です。18世紀頃に、イギリスの産業革命を通じて労働組合は発展しました
としたうえで、イギリスのみならず日本における労働組合についても触れられています。戦前まで遡り、
1921年には、労働組合の全国組織である日本労働総同盟(総同盟)も設立されたんだ。しかし、中国との戦争を推し進める政府によって労働運動が抑えつけられ、とうとう総同盟は1940年に解散することになったんだ。
と解説されています。なお、紙面の都合で割愛されたのだとは思いますが、日本における労働組合の萌芽はさらに遡り、1800年代後半には様々な労働組合結成の動きがあります。もしご興味がある方は、小松隆二先生による労作、「日本労働組合論事始」をチェックすることをお勧めします。
労働三法だけで内労働関連の法律
分かりやすいだけでなく、法体系についても詳しく解説しているのが本書の魅力です。具体的には25pの図で、下記が紹介されています。
労働者と会社の関係を定めたもの
- 労働基準法
- 労働契約法
- 最低賃金法
- 労働安全衛生法
- 男女雇用機会均等法
- 育児・介護休業法
- 若者雇用促進法
- 障害者雇用促進法
労働組合と会社との関係を定めたもの
- 労働組合法
- 労働関係調整法
就職したい人と会社との関係を定めたもの
- 職業安定法
- 労働者派遣法
- 雇用対策法
- 雇用保険法
画像はアマゾンさんからお借りしました。