「心理学の観点からチームワークをよくするヒントを見つけたい…」。そんな風に思うときに手にとってしまうかもしれないのが国分康孝先生のご著書、「チームワークの心理学」です。

チームワークの5原理

著者の国分康孝先生は、チームワークのキモを下記の五つの原理としています。

  1. 私心を去れ
  2. 仕事を作れ
  3. 雑談をいとうな
  4. 権限と責任の認識
  5. 構成メンバーの安定度

この中で、一番大事だと感じた4番目の「権限と責任の認識」について、見てみましょう。これは、

自分は何をすることが公認されているか、何をすると出しゃばりになるかを知っておけということと、自分は何をなすべきで、何をなすべきではないかを自覚しておけということである

となります。これだけ聞くと当たり前なのですが、心理学的知見からこの「出しゃばり」を分析しているのが本書の面白いところです。

チームワークを乱す3パターン

著者の国分康孝先生いわく、出しゃばりには3パターンあり、それが、

  • 親心
  • おとな心
  • こども心

とのこと。たとえば、親心というのは、その場を自分が勝手に仕切ることを指します(通常の意味での「親心」とは異なるニュアンスです)。また、「おとな心」は、現実的な損得勘定のことで、チーム内で誰かが一生懸命はたらくと、そのしわ寄せが自分に来るので、一緒にサボることを促すような出しゃばりを指します。また「こども心」は、自由奔放でけじめがないことを指します。

ここは、著者の国分康孝先生のご専門の、交流分析の知見がいかされているのでしょう。人間の心の中を、

  • P: Parent (親)
  • A: Adult (おとな)
  • C: Child (こども)

に分解した上で、どれか一つが強すぎてバランスが悪くなると、上記のような「出しゃばり」につながるのだと理解しました。

なお、この書評ではザックリとまとめていますが、本書には、実際に著者が体験した様々なエピソードが盛り込まれていますので、ご興味がある方はご確認ください。

欲しいのは、チームワークをよくする具体的な行動

本書で若干物足りないと感じたのは、上記のような「出しゃばり」の人への対応法が書かれていないことです。分析自体には納得するし、エピソードを読むと、「あー、いるいる、こういう人」と思うのですが、「どうやって対処したらいいか」がないのでモヤモヤ感が残ります。

たとえば、「こども心」過剰で天真爛漫な人への対処法。確かにこういう人はいて、悪い人ではないのですが、もっと周りに気を遣ってもらわないとチームワークが成立しないと感じます。ただ、この手の人は、「周りに気を遣え」とアドバイスしても全く響かないのが悩みです。その場では、「分かりました!」と答えてくれるものの、行動が全然変わらないという…。

それこそ心理学的な知見から、その対処法が書いてあるとより有意義だと思いました。


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