「エンゲージメントの本場、米国ではどんな取り組みがされているか知りたい…」。そう思った時に手にとりたいのが田口力先生のご著書、「世界基準の「部下の育て方」 「モチベーション」から「エンゲージメント」へ」です。
米国におけるエンゲージメントは従業員の株主化
著者の田口力先生いわく、米国では1990年代からエンゲージメントの向上に取り組んできたとのこと。定義としては、
従業員一人ひとりが持つ知識や経験、スキル、そしてアイデアや熱意といったものを、会社と自己の成長のために「投資」してもらうための取り組みがエンゲージメントです。
その神髄は、
従業員を、自社にとって大切な「投資家」と考えます。…従業員に対する見方を、従来のような「管理する」対象としてではなく「エンゲージする」対象としてみるように、パラダイムを転換する必要があります。
とのこと。
この背景として、従業員を会社の所有物と考え管理しようとすると、従業員自身の自律的・能動的な仕事の取り組みを阻害してしまうという問題意識があります。結果として、失敗することを恐れて、新たなことに取り組まなくなってしまいます。これは、イノベーションが求められる現代のビジネスにはそぐわないのでしょう。
一方、従業員が投資家であれば、そのモチベーションは成長を最大化することにあります。その結果を配当、あるいは株価の上昇という形で受け取れますが、その上限には限りがないのでやる気もかき立てられます。仮に失敗したとしても、投資家ならば「見切り千両」。いつまでも失敗にこだわらずに、別の組織で機会を求めよう、という考えになるので、新たなチャレンジにも取り組んでくれるでしょう。
一方で、この状況がそのまま日本に当てはまるかは疑問があります。著者の田口力先生は、元GEクロトンビル・アジアパシフィック プログラム・マネージャーの方。「世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本」などの書籍も上梓され、米国における人材マネジメントに造詣が深い方です。結果として上述の視座をお持ちなのです。しかし、日米では雇用環境や労働慣行が大きく異なります。とくに「終身雇用」に代表される、人材の流動性の低さは、「従業員を株主として捉える」ということを難しくしていると想像します。
エンゲージメントリーダーの6つのスキル
では、部下のエンゲージメントを高めるためにリーダーは何をすべきか。それがエンゲージメントリーダーの6つのスキルです。
- 幅広い思考
- 曖昧さや不確実性を管理する
- ビジョンを設定し、その達成を追い求める
- 正しい製品やサービスを採用する
- よい聞き手
- 自我を抑え、謙虚に振る舞える
- 識見や明確さを追い求め、先入観にとらわれない
- 言うことは最小限にして、より多くの質問をする
- 自己および他者の育成
- 継続的に学び続ける
- 決して諦めず、現実と向き合い、逆境にも立ち向かう
- チームとしての学習を奨励し、実現できる
- コミュニケーター
- ストーリーを語り対話を行うことで、他者との感情的なつながりを築ける
- 人を鼓舞して行動を起こさせ、コミットメントを高められる
- 目的を決め、人々の力を結集してことに当たらせることができる
- グローバリスト
- 世界の出来事に敏感である
- 多くの人々と関係性を持つことができる
- グローバルな視点を持って機敏に行動できる
- ネットワーカー
- 複眼思考によって、問題を見出している 複数の要因間の関係性を見抜ける
- 技術力を活用できる
- 指示するより影響を与える
なお、このエンゲージメントリーダー像は、世界各地のリーダーを調査して機能的に発見されたとのことです。
世界110か所の有力な企業や公的機関を訪れ、それらの組織が将来を担う人材をどのように指定育成しているか調査しました。その結果として、「エンゲージメント」が次世代リーダーの必須スキルになると言うことが改めて認識され
たとのことです。
エンゲージメントリーダーになるための9つのチェックリスト
では、このリーダー像をもう少し具体レベルで掘り下げてみましょう。とくに、GEのような多国籍企業では、「多様性を生かす包容力」、すなわち
組織の目標を達成するために社員間の相違を積極的に受け入れ、それらをうまく調和させる力
が求められているとのこと。この多様性を生かす包容力のチェックテストが下記になります。
- 部下との繋がりを大切にし、チームを鼓舞している
- 部下それぞれの個性を活かし尊重し、独自の関心ごとに訴えられている
- 一人の個人として深い関わり、信頼を築くことでチームとの一体感を作れている
- 部下を元気づけ、より大きな成功への意欲を持たせられている
- 個人や文化の相違を理解し賞賛する環境を促進できている
- 価値あるフィードバックや一貫したコーチングを行い、部下の成長を促せている
- 部下を創造的に評価し、個人やチームの実績を認識する機会を見つけている
- 議論を盛り上げるような思慮深い質問を訪ね、新しいアイデアを受け入れている
- 部下からの微妙なメッセージを捉え、さらなる情報や説明を積極的に求めている
画像はアマゾンさんからお借りしました。
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