エンゲージメント・サーベイ導入の際にチェックしたい本、中原淳先生のご著書「サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」を書評します。今回は、第3弾です。

エンゲージメント・サーベイ5つのチェックリスト

本書全体を貫くフレームワークは、

  1. サーベイによる見える化:自分の職場・チームの問題を可視化する
  2. ガチ対話:サーベイによって明らかになったデータに現場の人々が向き合い対話を行う
  3. 未来づくり:自分たちの将来のあり方を自分たちで決めてアクションプランを得る

というものでした。今回はこの1番目のプロセス、「サーベイによる見える化」、すなわちエンゲージメント・サーベイによるデータ収集を解説します。著者の中原淳先生は、下記の5つのチェックリストを提唱しています。

  1. 組織にフィットしたサーベイを選ぶ
  2. 相手本位の立場で、データの質にこだわる
  3. 回答を求めるときに、データの取得の目的を伝える
  4. タイムリーに見える化する
  5. サーベイ慣れに注意する

この中から、まずは最初の「組織にフィットしたサーベイを選ぶ」を見ていきましょう。

会社独自のエンゲージメント・サーベイもありえるが…

大枠で言うと、エンゲージメント・サーベイにはその会社独自で設計・実施するものと、外部のサービスを利用するものの二つに分かれます。それぞれのメリット・デメリットは本書の115ページに記載されているとおりですが、著者の中原淳先生は、

理想を言えば、質問紙は、既存のものを使うよりも、自分たちでオリジナルのものを作るのがベストだと思います。質問紙をつくっていくプロセスとは、結局、「この組織はどんな姿でありたいのか」、「この組織は何をめざすのか」を、組織内のメンバーで考えていくプロセスに他なりません。質問紙をつくること自体が、組織にとって大切なことが何かを考えていくことなのです。

と結論づけています。なお、ここでは文脈上「質問紙」と記載してありますが、実際のサーベイはインターネット上で行うことが想定されているのだと思います。

一方で、会社が独自にエンゲージメント・サーベイを行う場合、従業員から見ると、プライバシーが守られないと見なされる恐れもあります。つまり、「こういうのは、誰がどう回答したのかがバッチリ記録されるものだ。人事考課で損にならないように、会社を礼賛する記述だけをしておこう」との反応です。

このようになってしまったら、そもそもとしてエンゲージメント・サーベイをやる意味がなくなってしまうので、この観点で言うとサーベイは外部の業者を使って行う方が妥当であると観じました。

難癖を付ける人に対応する、外部のエンゲージメント・サーベイ

なお、会社独自のエンゲージメント・サーベイを採用するリスクとして、社内で「難癖」を付けてくれる人が指摘されています。著者の中原淳先生いわく、

私の経験上、理系で、数字に強くて、しかしながら、会社や職場の方針に対して一家言持っている人に、そうした傾向があるように思います。

とのことで、「あー、そういう人、いるいる」とリアルに感じられました。そういう人は感情的と言うよりも、ロジカルな難癖を付けてくるのが特徴で、

「この調査、そもそも意味がないんじゃないの?」、「この調査は、科学的にはどうなのかな?信頼性が検証されてるの?」

のようなセリフです。会社独自のエンゲージメント・サーベイを導入する際には、このような反論に備えておく必要があるとのことで、この手間を考えても外部の業者を使った方がよいと感じました。


画像はアマゾンさんからお借りしました。

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