「中途採用者が実力を発揮できない…」。そんな悩みをお持ちの方がチェックしたいのが尾形真実哉先生のご著書「組織になじませる力~オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ」です。 今回は、中途採用者、いわゆる「転職組」のオンボーディングについてまとめました。

中途採用者オンボーディング、6つの壁

著者の尾形真実哉先生は、中途採用者がオンボーディング期間に直面する困難を書き6つの側面でまとめています。

  1. スキルや知識の習得
  2. 暗黙のルールの理解
  3. アンラーニング
  4. 中途意識の排除
  5. 信頼関係の構築
  6. 社内における人的ネットワークの構築

この中から2番目の暗黙のルールを詳しく解説します。まず、大前提としてはいい悪いは関係なく、それぞれの会社ごとに固有のカルチャーがあり、それを体現した行動様式があります。例えば、LINEの業務上の利用。ある会社ではNG。「そんなもの、仕事に使うべきではない」、「セキュリティはどうなっているの?」、「プライベートの時間を侵害するのでは?」などなど、様々な理由が挙げられます。ところが、別の会社ではOK、どころか、むしろ積極的に勧められています。「手軽」、「リアルタイムに近いコミュニケーションがとれる」、「既読が付いて、確認の手間がない」などなど。LINEという同じツールに対しても、会社によってそのスタンスは180度ちがい、中途採用者はこれになじむ必要があります。

これがLINEぐらいの分かりやすいものであればいいのですが、問題は「暗黙知」になっているものです。

既存社員も容易に暗黙のルールを教えることはできません。なぜなら、長い仕事経験のなかで無意識に習得してきたものが多く、言語化が難しい知識(暗黙知)だからです。

と著者の尾形真実哉先生もその難しさを指摘しています。

中途採用者のオンボーディングに必要なアンラーニング

続いて、3番目のアンラーニングも見てみましょう。そもそもの英単語unlearningは「学習する」のlearningに否定のunを付けたものですから、堅い言葉では「学習棄却」と翻訳されます。ただ、本書では著者の尾形真実哉先生は

いったん学習したことを意識的に忘れ、学び直す(学びほぐし)

という説明されています。

中途採用者は、転職に取り組むわけですから、前職で実績を上げて自信を持っている人が多いでしょう。そのような人は、過去の経験から自分なりの仕事のやり方を確立していることが多いものですが、オンボーディングにおいてはその自信がネガティブにはたらくことがあるとのこと。

過去の経験から得られた持論を容易に捨てられず、過去の経験に固執してしまう傾向が強いため、転職先になじみにくいことがあります。過去の成功体験に固執することが、新しい環境への適応を阻害するのです。

という説明は、「たしかに」とうなづけます。

もっとも、このアンラーニングはそう簡単なことではありません。実際、著者の尾形真実哉先生も、

前職での経験や知識を、全て棄却しなければ鳴らないわけではありません。全て棄却しては、中途採用者としての強みを自ら捨て去ることになります。

と指摘しています。

オンボーディングで人的ネットワークを広げる

次に、6番目の社内における人的ネットワークの構築を見てみましょう。仕事で成果を出すに当たっては、「この分野はあの人に聞けばいい」、「この案件にゴーサインをもらうためには、あの人を説得するのが肝心だ」のように、組織の中にどのような人がいるかの把握は不可欠です。ところが、中途採用者はこのような人的ネットワークがゼロであり、ここにオンボーディングの必要性があります。すなわち、意図的に人的ネットワークを広げるような取り組みをすべきということです。

さらにリアルな話題としては、社内政治があります。これは著者の尾形真実哉先生は触れられていませんが、社内政治の度合いが強い組織の場合、中途採用者は「誰に付くか」で迷うでしょう。万が一弱い派閥の人と仲良くなってしまうと、その後仕事がやりにくくなってしまいます。したがって、知識を得たい、サポートを得たいというポジティブな人的ネットワークだけでなく、「社内政治の度合いが強いか弱いか」、「社内で『地雷』となるのはあの人だ」なども教えてあげた方が、中途採用者へのオンボーディングとしては適切でしょう。

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