「中途採用者が実力を発揮できない…」。そんな悩みをお持ちの方がチェックしたいのが尾形真実哉先生のご著書「組織になじませる力~オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ」です。 今回は、中途採用者、いわゆる「転職組」のオンボーディングのノウハウをまとめました。

中途採用者オンボーディングの8か条

著者の尾形真実哉先生は、中途採用者のオンボーディングに成功するために下記8つの施策を提唱されています。

  1. 中途採用者の捉え方を変える
  2. 中途採用者研修を実施する
  3. サポートする他者(適応エージェント=オンボーディング・メンター)を与える
    • 適応エージェントの重要性
    • コネクターの重要性
    • 適応サポートシェアリング
  4. 上司と中途採用者の定期的な面談を実施する
  5. 人事部と中途採用者の定期的な面談を実施する
  6. 準備期間を設ける
  7. 上司や同僚など「受け入れ側」への教育を実施する
  8. 中途文化を醸成する

この中から、1番目の「中途採用者の捉え方を変える」を見てみましょう。これは端的に言うと、中途採用者を即戦力として見ることを辞めましょう、となります。むしろ、

中途採用者=新卒採用者よりは多少早めに成果を出す人材

との見方を勧めています。そして、そのために、充実したサポートが必要である、と。問題意識としては、新卒採用へのサポートとの差があります。

多くの日本企業では、新卒採用者には豊富な教育が用意されますが、なじむことにより困難を伴う中途採用者には、適切な教育がほとんど用意されていません。

という指摘は、言われてみればその通りです。

中途採用者向けオンボーディング研修

では次に2番目の「中途採用者研修を実施する」を見てみましょう。社内のアプリやイントラなどの教育をするのは当然として、製品情報、顧客情報、業界情報なども研修にて手厚く教えるべきでしょう。実際、日本企業のサイボウズ、外資系の日本オラクルなどでは、営業担当者向けに製品情報などの手厚い研修が用意されています。

加えて、著者の尾形真実哉先生は、「人的ネットワーク構築・広範化研修」を提唱されています。というのは、中途採用者にオンボーディングが必要な背景として、社内の人脈がないことがあげられています。まさにこれを解決するために、中途採用者向けオンボーディング研修が役立つということでしょう。そして、ここが面白いのですが、この人的ネットワーク構築・広範化研修も、2タイプあり得るとのこと。

一つ目が、中途採用者研修(同質性研修)です。参加者は中途採用した人のみ。つまり、中途入社同士で人的ネットワークをつくろうという試みで、言わば擬似的な「同期」のように機能するのではないかと思いました。そして二つ目が、異質性の高いメンバーで構成する研修(多様性研修)です。これは、中途採用者のみならず他部署の既存社員も参加することで、異質な(中途入社、プロパー)人々のネットワークを構築しようとなります。

一方で、著者の尾形真実哉先生が提唱されている、「アンラーニング」というのはピンときません。もちろん理屈としては、前職の「常識」を取り去る必要があるのは分かります。また、理想的には中途採用者がアンラーニングすべきものとそうではないものを判断する、「良いところ取りアンラーニング」も目指すべきでしょう。ただ、実際の研修において、何をどうやってアンラーニングを促進するかが見えてきません。

ここは、アンラーニングという言葉にこだわらず、新しい組織においては過去の行動を「上書き」する必要があるという理解でもよいのではないかと思いました。

中途採用者向けオンボーディング・メンターの重要性

では次に、3番目の「サポートする他者を与える」を見てみましょう。著者の尾形真実哉先生は「適応エージェント」という言葉を使っていますが、要するにオンボーディング・メンターです。中途採用者が何か疑問があったときに真っ先に聞ける相手ですし、人的ネットワークを広げる「コネクター」としての役割もあります。

そして、ここで面白いと思ったのが、「適応サポートシェアリング」という考え方です。というのは、中途採用者の質問に答えて、さらに人脈を広げてあげて、とオンボーディング・メンターは負荷が高いものです。だとしたら、ひとりの人間がメンター役になるのではなく、複数人でそれを担うという仕組みがあり得ます。

この適応サポートシェアリングは、中途採用者側にもメリットがあります。仮にひとりのメンターが付いたとして、その人との相性が悪かったら最悪です。しかし、複数人のメンターがいるとなれば、この相性の問題も回避することができます。

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