「マネージャーになりたくない」。そう思う人が増えています。ところが。そんな人が実際にマネージャーになると、半数以上は「なってよかった」と思うそうです。要するに、未知のものを恐れる気持ちが強いのでしょう。だとしたら、事前にマネージャーに必要なものを理解するのは意味があります。そんなときに手にとってしまうかもしれないのが中原淳先生のご著書、「駆け出しマネジャーの成長論 – 7つの挑戦課題を「科学」する」です。

ベースになったのはマネジメント・ディスカバリー研究「マネジメントへのいこうと熟達に関する共同調査」

本書は、東京大学中原研究と公益財団法人日本生産性本部(Japan Productivity Center: JPC)の共同研究がベースになっています。それが、マネジメント・ディスカバリー研究「マネジメントへのいこうと熟達に関する共同調査」です。

この研究から面白い調査結果を紹介しましょう。たとえば、プレイング・マネージャーの問題です。これは日本の多くの企業で聞かれる悩みですが、昇進して管理職になったにもかかわらず、「プレイヤー」としての仕事の一部をこなしている状況です。たとえば営業部門の管理職であれば、重要な顧客の担当は続けたまま管理職に昇進するようなのが典型的です。

この実態が調査によって明らかになっていますが、結論としては、

純粋にマネジメントだけに徹している「完全マネジャー」は…全体の2.7%でした。

ということで、ほぼ全ての会社においてこのような状況は発生しているとのこと。

ただ、問題は一人の人間の中でプレイヤーとマネージャーの力の入れ具合、もしくは時間配分をどうするかです。これまた研究結果からは、

プレイングに過剰に時間を当てているマネジャーは、一般的なマネジャーよりも、職場業績が低いことが分かりました

と言う結論が導き出されています。もっとも、因果関係までは説明されていないので、プレイングに過剰に時間を当てているからパフォーマンスが落ちているのか、パフォーマンスが落ちているから何とかしようとプレイングに時間を割かざるを得ないのかは判然としないところがあります。

新任管理職が直面する7つの課題

著者の中原淳先生は、新たにマネージャーになった人が直面する挑戦課題を書き7つであるとまとめています。

  1. 部下育成
  2. 目標咀嚼
  3. 政治交渉
  4. 多様な人材活用
  5. 意志決定
  6. マインド維持
  7. プレマネバランス

この中から2番目の「目標咀嚼」を見ていきましょう。

会社が作った目標を自分の部下たちにかみ砕いて説明し、部下たちの納得を得ること、会社の戦略を部門の仕事に落とし込み、部下たちに仕事を割り振っていくことです。したがって、これは「部下育成」と密接に絡み合う課題となります。部下に仕事を振る際、マネジャーは部下に対して、その仕事が会社にとっても職場にとっても戦略的に意味のあることであり、部下本人の成長にも役立つことを説明しなくてはならないからです。

と言う職務を指します。これを実現するために著者の中原淳先生は、「ポジティブ・ストーリーをつくること」を提唱されています。すなわち、

  1. 私たちとは今、どのような状況にあるのか?環境はどのような状況なのか?
  2. 短期的/中期的/長期的に何を達成するのか?
  3. 最後にどのようなポジティブな世界が広がっているのか?

を説明することになります。

ボス・マネジメントも管理職の仕事

次に、新任管理職が直面する7つの課題の中から「政治交渉」を見てみましょう。この「政治」の中には上司に対してどう振る舞うかも含まれ、要するに「ボス/マネジメント」が必要とのことです。

ここでは、著者の中原淳先生は、3つのアプローチを推奨されています。

1. ボスの理解

2. ボスとの関係構築

3. ダンドリを踏んだロジック

そして、3番目のダンドリを踏んだロジックに関しては、

上司にジャッジしてもらいたいことにはタイミングがあり、その前にどれだけ情報を入れておけるかで決まりますね。いきなり情報をたくさん持っていっても、判断してもらえない… 要するに段取り力の話

という、冒頭に紹介した調査からのインタビューが紹介されています。

中原淳著、駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する
画像はアマゾンさんからお借りしました。

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