「研修でやったことをどう定着させるか…」。そんな問題意識をお持ちの人事担当者ならば手にとりたいのが中原淳先生などの著書「研修開発入門 「研修転移」の理論と実践」です。今回は第2部、「研修転移の実践事例」に紹介されているビームスさんの新入社員研修の事例を紹介します。
BEAMSで重点的な新入社員教育が必要なわけ
まずはビームスの紹介から。分類でいうとアパレル小売業で、国内外に160店舗のセレクトショップを展開しているとのことです。セレクトショップというのは、その名の通りセレクト、つまり自社のテイストに合ったオシャレな商材を選んで展示・販売する業態です。たとえばユニクロやZARAなどは自社ブランドの商材しかおいていないのと対照的です。
同業他社は、
- Adam et Rope (アダムエロペ)
- EDIFICE (エディフィス)
- FREAK’S STORE (フリークス・ストア)
- UNITED ARROWS (ユナイテッド・アローズ)
など、いかにもオシャレな気配を漂わせたブランドが並びます。
となると、そこに入社してくる新入社員は、「服が好き」、「BEAMSの世界観が好き」のような人が多いと想像されます。逆に言うと、必ずしも顧客視点、商売視点を持っていないわけで、ここに新入社員教育を重点的に行う理由があると想像しました
ここまでやるか!BEAMSの新入社員教育
具体的には、BEAMSにおいては入社から3年間を新入社員教育期間と位置づけ、OJT、Off-JTを組み合わせているそうです。最終的な目標としては、
自分で目標を立てる→それに挑戦する(実践)→他者=先輩からフィードバックを受けて試行錯誤する
という行動様式を身に付けて欲しいとのこと。
これを実現するために、毎月1回面談を実施しているとのことなのですが、その面談にはOJTの担当者の先輩だけでなく、店長、スーパーバイザーと呼ばれるエリア統括のマネージャー、部課長、人事開発部の担当者が加わるという大がかりなものです。そこで、チェックシートを使って、業務にかかわる様々な行動ができているかを自己評価とOJT担当者、さらには店長が評価をすると言うものです。
ここまでやれば育成がしっかりと進みそう、という気もしますし、ここまでやらないとアパレル業界における育成はできないのか、とも感じます。
BEAMSの新入社員教育のチェックリスト
上述のチェックシートの内容を見てみましょう(詳しくは本書150p)。大きくは、下記5項目に分かれています。
- 「居心地の良いお店」を創ろうとする行動
- お客様に「楽しいお買い物」を提供しようとする行動
- 「新しいファン」を創ろうとする行動
- 「チームの仲間」を助けようとする行動
- まだまだ「自分の能力」を高めようとする行動
それぞれの大項目がさらに7つの小項目に細分化され、全部で35個のチェックポイントがあることになります。
たとえば、5番目の「まだまだ「自分の能力」を高めようとする行動」を細分化したチェック項目を見てみましょう。
- 曖昧な点、分からない点はそのままにせず、必ず解決している
- 仕事について日々振り返り、質とレベルを高めていく努力をしている
- 常に洋服に興味を持ち、商品知識の習得のために勉強している
などが並んでいます。
ちなみに、似たような業態として「無印良品」の事例も参考になると思いました。というのは、無印良品もマニュアルを軸にした店舗運営と人材育成で知られており、BEAMSの事例をより精緻に練り込んだものになっている印象です。
画像はアマゾンさんからお借りしました。