最近流行の1 on 1 (ワンオンワン)。導入の先端企業であるyahoo(ヤフー)での取り組みを知りたい…。そう思った人が思わず手にとってしまうかもしれないのが本間浩輔先生のご著書、「ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法」です。

人材育成界のオールスターによる1 on 1の競演

結論から言うと、ヤフーの取り組みだけではなく、1 on 1を導入している企業の様々な事例を知ることができるお得な、もしくは雑多な本です。内容としては書籍と言うよりもムックのような印象。なので、具体的な方法論を知りたい場合は、世古詞一先生の「シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―」の方が適しています。

一方で、本書の魅力は上述の通り様々な企業の取り組みとともに、中原淳先生(執筆当時は東京大学大学総合教育研究センター准教授)、松尾睦先生(執筆当時は北海道大学大学院経済学研究科教授)などの「人材育成のオールスター」のような方々が1 on 1に付いて語っているのを知ることができるという点です。

ヤフーにおけるシャドーコーチング

ヤフーの取り組みに関しては、とくに「シャドーコーチング」と呼ばれるトレーニング方法が興味深いものでした。これはロールプレイングによって対話の力を上げようというものです。一人が上司役、一人が部下役というのは通常のロールプレイングと同じ。加えて、上司役と部下役のそれぞれの背後に「シャドー」と呼ばれる、話し方・聞き方を観察する役割の人を配します。そして、5人目は対話全体のオブザーバーです。

著者の本間浩輔先生によると、

その効果は、とりわけ絶大です。これら5つの役割を順に交代しながらセッションを繰り返すうちに、対話の質がみるみる変わっていくのです。「人のふり見てわがふり直す」を地でいくわけですが、さらにシャドーという他者からのフィードバックが聞くのです。

とのこと。

ヤフーにおける1 on 1チェックアセススメント

どうように、1 on 1チェックというアセスメントの仕組みも取り入れているそうです。これは、

部下の側に、自分が受けた1 on 1を点数化してもらい、それを上司にアセスメント結果として返します。

というものです。その際の評価軸は下記の4項目です。

  • 内省効果:仕事を通して得た経験を定期的に振り返る機会となっている
  • 有効な気づき:対話を通して新しい行動に繋がる気づきが得られている
  • キャリア自律:適切なタイミングで今後のキャリアを描くための支援が得られている
  • 目標達成・評価:業務遂行上の目的達成に向けた支援が得られている

それぞれについて、3ヶ月に1回部下が1から4までの数値をつけて、その平均値がコメント文章とともに上司に通知されます。なお、その平均値に関しては、

大事なことは点数の高低ではなく、ビフォーとアフターの差です。アセスメント結果を振り返りの材料として、クオリティを上げてもらうのがポイントです。

とのこと。

具体的な業務内容にひも付く1 on 1

ヤフーの1 on 1は、週に1回30分を基本としており、かなり高頻度・長時間となっています。したがって、その運用方法も実際の業務に即して問題を解決することが中心です。たとえば、本書71pから記載されている上司と部下のダイアログでは、

上司:今日は何を話そうか

部下:A社に出す企画書のことなんですけど。

と会話が進みます。

しかし、このような会話は日常業務の中でもなされているので、わざわざ1 on 1で話す意味はないようにも感じてしまいました。いちいち時間を決めて予約をして話さなくても、上司の席に行って(もしくはZoomのチャットで呼びかけて)、「今ちょっといいですか?」と話せばいいわけで。

むしろ、1 on 1の本当の目的は、日常業務の中ではなかなか話すことがない、コミュニケーションの仕方、業務の進め方、心身の調子などを話題にすることでしょう。この観点においても、上述の世古詞一先生の「シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―」の方が、より多くの読者に役立つ内容なのではないでしょうか。


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