「初めて管理職になったけれど、どうしたらよいか…」。そう悩む人が手にとってしまうかもしれないのが安藤広大先生のご著書「リーダーの仮面 ーー 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法」です。

リーダーの仮面はアリだが、これだけではない

まずは総評から。著者の安藤広大先生の提唱する「リーダーの仮面」という概念は、

いかなるときも「個人的な感情」を横に置く

と言う言葉に表されます。素の自分ではなく、まるで仮面をかぶったようにリーダーという「機能」を淡々と果たすというイメージです。

これはこれでありですが、このようなスタイル「だけ」が正しいわけではないでしょう。欧米を中心としたリーダーシップ理論では、状況にあわせてリーダーシップ・スタイルを使い分けることが提唱されています。逆に言えば、唯一絶対の「正しいリーダーシップ」は否定されているわけです。

また、リーダーの仮面というコンセプトの根拠が、著者の安藤広大先生の個人的な経験談に大きく依っているところも気になるところ。上述のリーダーシップ理論は多数の事例の調査によっていますから、それと比較すると「いつもそうとは言えないのではないか?」という疑問が湧いてきてしまいます。

一方で、後述しますがリーダー、もしくは管理職が注力する5つのポイントには納得感があります。特に初めて管理職になった人にとっては、「これさえやればいいんだ」というのは納得感があるのではないでしょうか。

リーダーの仮面が提唱する5つのポイント

著者の安藤広大先生は、リーダーがフォーカスすべきものとして書き5つのポイントを提唱されています。

  • ルール
  • 位置
  • 利益
  • 結果
  • 成長

この中から、2番目の「位置」を見てみましょう。これは、

昨今、ティール組織やホラクラシー組織など、新しい組織の概念が流行しました。しかし、それらを今の会社組織にそのまま当てはめると危険です。ある人の体に、別の血液型の人の血液を入れると、身体は拒否反応を示し、死んでしまいます。それと同様に、ピラミッド組織には、「ピラミッド組織」に合った「マネジメント法」を導入する必要があります。完璧なピラミッドの下では、滞り管区ビジネスが回ります。そのために、リーダーがやるべき「位置」の確認をやっていきましょう。

と言う序文から解説が始まります。すなわち、組織構造としてピラミッド型を前提としたうえで、上司は部下に明確に指示・命令をすることが役割であると理解しました。具体的には、

  • 「お願い」ではなく「言い切り」で任せる
  • 機械的なほうれんそうをさせる
  • 緊張感を持って部下にナメられないようにする

などの行動になります。

リーダーの仮面が重視する利益

次に、リーダーの仮面の五つのポイントの中から、3番目の「利益」についてもみてみましょう。ここも序文から紹介します。

「ついていきたい」と思われたい。その感情こそが、諸悪の根源です。人は、「メリットを感じたとき」に利益についていくものです。「いいひとなんだけど、この人に付いていっても成長できなさそうだな…」そう思われてしまうと、途端に部下たちは離れていきます。リーダーがすべきことは、部下たちを「組織の利益」に向かわせることです。大きなマンモスの肉が「組織の利益」であることを認識させ、そこから「個人の利益」が発生する。それが正しい順番です。そんな世の中の仕組みに則って、リーダーの言動を正していきましょう。

つまり、組織のために働いたことが、個人の利益につながっていくと部下に確信させると言うことでしょう。そして、このためには部下に適度な負荷を与えることが不可欠であると著者の安藤広大先生は説きます。このようにすれば、人間関係など余計なことにとらわれず、部下は適切な行動を取ってくれるとのこと。

ヘタに安心感があり、ぬるま湯の中にいる人ほど、周りと仲良くやっていないことに、つい「恐怖」を感じてしまうのです。

と言う言葉には説得力があります。

安藤広大 著、リーダーの仮面 ーー 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法
画像はアマゾンさんからお借りしました。

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