OJT (On the Job Training)がリーダーにとって重要というのは論をまたないでしょう。その具体的な方法論を知りたいときに手にとってしまうかもしれないのが松尾睦先生が監修された「OJT完全マニュアル—部下を成長させる指導術」です。

OJTの6ステップ

まず全体像としては、下記の6ステップを監修者の松尾睦先生は提唱されています。

  1. 目標設定
  2. 計画立案
  3. 計画の実行
  4. トラブルへの対処
  5. 評価
  6. 学びの抽出

この中から「目標設定」を見てみましょう。ここで重要なのは「挑戦的な目標(ストレッチ目標)を部下本人に腹落ちさせる」こととのこと。OJTに限らず、ビジネスの中では難しいことですが、これにもコツがあると監修者の松尾睦先生は言います。それが、

ストレッチ目標を「やるべき目標」「できる目標」「やりたい目標」にする

ことです。たしかに、「やるべき目標」だけだといかにも上から押し付けられたように感じるでしょう。そこに、「できる」という感覚を持ち込めば、納得度は高まりそうです。

その他にも、

  • 短期目標と中長期目標
  • 学習目標と成果目標

を設定するなどの方法論が紹介されています。

OJTにおけるフィードバックの4原則

OJTに限らず難易度が高いフィードバックの方法論についても触れられているのが本書の魅力です。具体的には、下記のフィードバックの4原則を監修者の松尾睦先生は提唱されています。

  1. 聴ききる(できればメモをとる)
  2. プロセスを承認する
  3. 課題を問いかけ、本人に考えさせる
  4. アドバイスする

というものです。とくに、1番目の「聴ききる」は、なかなかできていないというのが多くのビジネスシーンで見られるのではないでしょうか。フィードバックと言うと、どうしても上司から部下に伝えるという一方通行になりがちです。しかし、部下からもコメントを貰う双方向であるべきというのが基本なのでしょう。

OJTにおける叱り方

部下・後輩を叱るというのも、難易度が高いものですが、本書ではその方法論が触れられています。

  • 感情的にならない
  • 人格を否定しない
  • 冷静になってから叱る
  • 叱る前にほめる
  • 事実に基づき叱る
  • 簡潔に、1対1で叱る

ただ、このパートに関しては、若干異論もありえます。たとえば、「叱る前にほめる」あるいは、叱った後はポジティブな言葉でフォローする、という点。

同じ情報をフィードバックする場合、「悪い点→良い点」よりも「良い点→悪い点」という伝え方の方が、相手の吸収能力を高めます。

との記載がありますが、このエビデンス(証拠)が提示されていないので今ひとつ納得感がありません。監修者の松尾睦先生はアカデミックな方なので、読者が期待するのも研究成果に基づいた提言であり、やや物足りなさを感じます。

更に言うと、同じ分野の研究の第一人者である中原淳先生はご著書「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」の中で、

上司の中にはフィードバック後に、変にほめる人がいますが、これは逆効果であることの方が実践知としても知られています。

と真逆の意見を述べています。

結論としては、実は「叱り方」に唯一絶対の正解はなく、その時その時の状況と上司のキャラクター、部下のタイプ、そして関係性によって大きく変えるべきということなのでしょう。


画像はアマゾンさんからお借りしました