変わりつつある労働組合の役割。それを示唆してくれるのが「衰退か再生か:労働組合活性化への道」です。その中から、第5章「外部人材活用の拡大と労働組合の課題」を中心にレポートします。

労務費の変動費化

章タイトルにある「外部人材」は、請負社員や派遣社員を指します。ご存じのとおり、日本の製造業の現場は正社員が担っているのが従来のスタイル。ところが、1990年代に入ると、生産現場で請負社員の活用が急拡大し、職場によっては正社員数を請け負い社員数が上回る状況になっているとのこと。

この背景には、大きく二つの理由があります。一つには業績の悪化、もしくは環境変化の大きさに伴い、企業が人件費を変動費したことです。日本においては従業員の解雇が難しく、一度雇用した従業員への給与は固定費となります。一方で、請負社員は業況が厳しくなり操業量が落ちれば契約を終了することで「雇い止め」することができるので、その費用は変動費にすることができます。

そして、もう一つの理由が、この企業からのニーズに対応する形で起こった人材ビジネスの隆盛。これが、本章後半の提言につながります。

人材活用の4つの提言

上述の外部人材を活用するに当たり、本書では以下の4つの提言をしています。

  1. 人材活用の基本方針を労使で確認する
  2. 外部人材の活用方法と外部人材の企業を適切に選択肢、法に則して活用する
  3. 人材ビジネスの選択基準を明確化する
  4. ラインへの情報提供とガイドライン作りを

この背景には、人材ビジネスと言ってもそのクオリティに幅があり、適切な業者を選ばないと製造現場の生産性と精度が落ちるという問題意識があります。

必要とされる一定の技能を保有した社員を確保し派遣する人材の選考と配置に関わるマッチング能力が、一定の技能を保有した社員を確保育成して派遣する能力に加え、職場での日常的な労務管理を担えるリーダーを派遣できる労務管理能力が(中略)必要になる。

と提言されています。

労働組合がセミナーで派遣ビジネスを選別する力を養う

このような状況をかんがみると、これから労働組合に求められるのは、上記のような人材ビジネスの選択を的確にできる人材の育成ではないでしょうか。というのは、企業側はどうしても人材ビジネスを選ぶ際にコストの面を重視しがちです。事実、本書においても、

従来、活用する請負会社を選ぶ際にユーザー企業は、請負料金の額や請負労働者の技能水準を重視することは多かった

と指摘されています。

したがって、チェック&バランスをとるためにも、労働組合内でセミナーなどを開催して、「適切な人材ビジネスの選び方」などを周知するとよいのではないでしょうか。

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