最近経営で話題のキーワード、「心理的安全性」に興味がある人なら手にとりたいのが石井遼介先生のご著書、「心理的安全性のつくりかた」です。
googleも認めた心理的安全性
まずは定義から。心理的安全性の「発見」に大きく貢献したハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授は、下記の通り心理的安全性を定義しています。
チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと
そして、この心理的安全性が有名になったのが、米google社内の調査です。google内ではたくさんのプロジェクトチームが存在するわけですが、すべてがうまくいっているかというとそうでもないそうです。たとえ優秀な人が集まっても、やっはりイケてないプロジェクトチームはあるそう。では、効果的なチームは、どのようなチームか、を2012年から4年間かけて調査したのが「プロジェクト・アリストテレス」と呼ぶリサーチです。結論としては、
誰がチームのメンバーであるかよりもチームがどのように協力しているかが重要
とのこと。つまりは、心理的安全性がハイパフォーマンスチームを生み出すと検証されたのです。
心理的安全性を測定する7つの質問
そして、エドモンドソン教授は、このチームの心理的安全性を測定するための7つの質問を発案しました。
- If you make a mistake on this team, it is often held against you. (このチームでは、ミスをしたら批難されることが多い)
- Members of this team are able to bring up problems and tough issues. (このチームのメンバーは、課題や困難なイシューでも提起することができる)
- People on this team sometimes reject others for being different. (このチームの人たちは、異質なものを排除する時がある)
- It is safe to take a risk on this team. (このチームなら、安心してリスクを取ることができる)
- It is difficult to ask other members of this team for help. (このチームでは、他のメンバーに助けを求めにくい)
- No one on this team would deliberately act in a way that undermines my efforts. (このチームには私の努力をわざと矮小化するような人はいない)
- Working with members of this team, my unique skills and talents are valued and utilized. (このチームのメンバーと仕事をする中で、私のスキルと才能は尊重され役に立っている)
出所:A Edmondson, Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams, Administrative Science Quarterly, Vol. 44, No. 2 (Jun., 1999), pp. 350-383
ただ、これをそのまま受け入れるのは若干危険。なぜならば、アメリカと日本では人事慣行が大きく異なるから。単純に考えても転職のしやすさは大きく異なりますし、ましてや先ほどのgoogleは、多くの日本企業にとって有効なサンプルにはなり得ないでしょう。googleのように世界中から優秀な人材を採用できることはまれなのですから。
本書では、日本での調査に基づいて、新たな提言をしているのが魅力です。
ちなみに、余談になりますが心理的安全性に関しては、エドモンドソン教授の貢献が若干過大評価されている印象があります。上述の質問は、若曖昧で意味がとりにくいなどの批判がありますし、そもそもが心理的安全性という概念自体、1965年にシャイン、ベニス両教授が提唱したものですし。
日本の組織における心理的安全性
では本題に戻りましょう。著者の石井遼介先生は、日本の組織における心理的安全性の要素として、下記の4つの因子があると提唱しています。
- 話しやすさ:何を言っても大丈夫
- 助け合い:困った時はお互い様
- 挑戦:とりあえずやってみよう
- 新奇歓迎:異能、どんとこい
ただ、気をつけなければいけないのは、組織においては心理的安全性だけあれば良いというものではないということ。実は同時にもう一つ大切な要素があって、それが「仕事の基準の高さ」です。これを加えて、日本の組織は下記の4類型に分かれると著者の石井遼介先生は説きます。
仕事の基準 |
|||
低い | 高い | ||
心理的安全性 | 高い | ヌルい職場 | 学習する職場 |
低い | サムい職場 | キツい職場 |
目指すべき姿は、当然右上。逆に言えば、たとえ心理的安全性が高まっても、仕事の基準が低いと、組織としての効率性は良くないということです。
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