前編、中編に続いて、石井遼介先生のご著書、「心理的安全性のつくりかた」をレビューします。
宣言することで心理的安全性を高める
ここでは、具体的に心理的安全性を高める取り組みを紹介します。まずは分かりやすく「宣言」すると言うものです。ある会社では、会議の冒頭で毎回「宣言」されるそうです。
この場所は、安全な場所です。どんな意見やアイデアを言ってもいい場です。失敗やトラブルの報告があれば、それを叱る場ではなく、どうするか前向きな検討をする場です。この場の安全性は、私が担保します。
もちろん、最初のころは「ホントかよ」と疑う参加者もいたのではないかと想像します。でも、繰り返されるにしたがって、あるいはこの書評の中編で紹介した考え方で言えば、リーダーの「大切なものへ向かっていく」という行動を首尾一貫してとることによって、「やっぱりそうだよなぁ」という思いが広がってくるとのこと。実際にある会社では、
朝礼や会議の場の冒頭での宣言をしばらく続けると、心理的安全性を壊すような発言が出ると、参加メンバーから「ここは心理的安全な場なんだから…」と突っ込みが入るようになった
とのことです。
心理的安全性を高めるには感謝からはじめる
理由をつけて感謝を伝えることも、当然心理的安全性を高めることにつながります。具体的には、
- 「いつ・どんな時に、誰が、何をしてくれたのか」出来事自体を思い出す
- 「他でもない私」にとって、それは何がありがたかったのかを振り返り、掘り下げる。「あなたが素晴らしい」ではなく、「私が助かった」という自分を主語にしたメッセージで感謝の伝え方を考える。自分がいかに助かったかを掘り下げることが「理由をつける」ことにつながる
- 実際に伝える
という3ステップです。
ときどきリーダーシップの書籍の中には、「ほめる」のが大事と説くものがありますが、それよりもここで言う感謝の方がピンときますね。なぜならば、「ほめる」には必然的に「上から目線」が入るからです。単純に考えても部下が上司をほめることはないわけで、その序列(上下関係)は心理的安全性とは逆方向にはたらく気がします。
行動に着目して心理的安全性を高める
上述の宣言にしても感謝を伝えるにしても、大事なのは「行動」であると著者の石井遼介先生は説きます。たとえば感謝にしても、心の中で「ありがとう」と思うだけでは不十分。それを言葉にしたりメールを送ったりチャットで伝えるなどの「行動」があってはじめて心理的安全性につながるのです。したがって、本書の第3章、第4章は、行動分析学に基づく解説がなされます。
ただ、この行動分析学、所見の人にとってはハードルが高いのではないかと懸念します。そもそも、「行動」に着目するって何?という疑問もありますし、「好子(こうし)」や「嫌子(けんし)」などの用語もとっつきにくいものではないでしょう。ここでつまづくともったいないので、もしこの分野に興味がある方は、「行動分析学入門 人の行動の思いがけない理由」や「自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書」などを合わせて読むことをお勧めします。
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